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小説「イメージ2」No:27

イメージ No:27

暑中お見舞い申し上げます

 キキは福賀のためにパリで美術関係者と連絡を取り合っていた。
福賀の作品を扱っている画廊のオーナーにも。
明日は福賀のパーティが用意されている。
「その前に会って打ち合わせをしたいので会いませんか?」
「はい、では11時半にロビーでお待ちしています」
いよいよパリの舞台で福賀貴義の活躍が始まる。
 
 パリ航空ホテルのロビーでキキと会い、食事をしながらパリでの行動を
福賀が打ち合わせをしている。
明日はフランス美術家協会主催のパーティが福賀のために用意されている。
そこに福賀と会いたい人たちが参加してくる。
「キキ、色々有難う」
「パーティはフランス航空がスポンサーで社長が福賀さんに関心があって
参加したいと云っています」
「そうですか。キキが良い感じに紹介してくれて感謝しています」
「いえ、私はただ話を通しただけ。社長も美術家協会の会長も喜んでいます。
これから今まで以上にお忙しくなりそうで、私は今からワクワクしています」
「ワクワクしてもらえるように頑張らないといけませんね」
パリは久し振りの福賀を柔らかい陽射しで迎えてくれた。

 パーティは午前10時から始まった。
フランス航空の社長ムッシュ・セザンヌが洒落た紹介をしてくれたのでどっと
会場がわいている。
福賀の横にはキキが付いて素早く日本語に訳して伝えてくれる。
パーティは立食で行われ福賀には色々な来客者が挨拶に来てくれていた。

 様々な芸術の世界で活躍している人たち、画廊のオーナーたち、政界の要人。
ファッション界のデザイナーとモデルたち、中国の人、アラブ系の人たちなど。
フランス美術家協会の会長が福賀を紹介して回っている。
福賀にとってこのパーティはフランスへのデビューの場となった。
「日本に行った時はよろしく」これが此のパーティの合言葉になった。
「福賀さん。パリにアトリエをお持ちですか?」
「仕事場としてアパートを借りています」
「そこで制作を・・・」
「あの作品もですか?」
「そうです」
そこに、話の画廊のオーナーとアラブ系の男性が近づいて来た。
「此の方が福賀さんの作品に興味を持たれて是非欲しいと云われています」

福賀は次の日の夕方、その画廊アルテにいた。
「作品は昨日のあの方が買われて今送り出したところです。是非、国の方に
来てくださいと伝えてほしいと頼まれました」
「そうですか。私の作品は旅立ちましたか」
「次の作品をお願いします」
福賀は自分の作品が飾ってあった広く空いた壁面を見詰めていた。
「それから・・・」
話しかけたオーナーの言葉をとめて・・・」
「あの方って?」
「あの方はアラブ系のさる王国の王子です。それから」
オーナーは他に何か福賀に伝えておく事があるようだ。
「これを福賀さんに渡してほしいと」
「・・・?」
「アトリエに使ってほしいと・・・キィです。それと此れが住所です。
これが門扉のリモコン。自由に使ってほしいとのことです」
「・・・?」
その場所はパリ郊外の住所だった。
「誰だろう?」
「それは、行かれたら解ると云ってました」
「なんてミステリアスな」
「行ってみましょう。福賀さんの作品を受け取りに行く都合があります」
「そうですね。行かない訳にはいきませんね。オーナーには此れからも色々
お世話になるし、地理も解りませんから、案内をお願いします」

 画廊のオーナーに案内されて書かれた住所に行ってみることにした。
コンコルド広場の近くの画廊からマドレーヌ寺院を抜けサンラザール駅を
抜けた所にそれはあった。
小ぢんまりした城に近い建物だった。
 福賀は画廊のオーナーから渡されていたリモコンで門扉を開けて中に入る。
車で入って行くと中央に円形の花壇があって、それを回り込むと3階建ての
本館、その隣に小さ目の2階建ての建物がある。
そこから人が出て来た。
「フクガさんですか?」
「こちらがフクガさんです。私は画廊のオーナーのアルテです」
「フクガキヨシです」
「私はここの管理をしている庭師のジャンです。ご案内しますからどうぞ」
 扉を開けると20畳位の空間があって正面に螺旋階段が3階まで繋がっている。
ちょっとお茶目な天使が優雅な素振りでゆっくりと降りて来そうな感じだ。

 落ち着いていて静か、品格があって執事が迎えに出て来そうな感じがする。
左に円形の広い部屋、右にも円形の広い部屋があって、後ろが厨房で繋がって
いるようだ。
パーティの時はシェフたちとウエィターやウエイトレスを呼んで賄うのだろう。
その他にトレーニングルームやビリヤード室など遊戯室が色々あるらしい。
2階に7つのバストイレ付きの寝室があり、3階は王子のプライベートルームに
なっていて地下にも何室か部屋があるらいいが一度では見切れない。
福賀がアトリエとして使えるのは多分2階の二部屋続きの部屋になるだろう。
その部屋はバルコニーに出るドアが大きくて2.50mの高さがある窓付き
になっているので100号のキャンバスを運び出すのに都合が良い。
梱包した作品を吊り下げて降ろせば運び出せる。
このお城はアラブ系の王子のものだが一部を福賀が自由に使わせてもらうのだ。
さっそくアパートの事務所をここに移さなければならない。

 そして暮れかかってから外に出て周囲を散策しながら画廊アルテによった。
オーナーは福賀の新しいアトリエ兼事務所の手配をしてくれている。
「福賀さんの好きなポルシェが間もなく届きますよ。ホワイトでしたね」
「有難う。マダムのお陰でパリでの私の楽しみが揃いました」
マダム・アルテに礼を云って福賀は新しい住まいに向かって車を走らせた。

 自分のアトリエ兼事務所に決めた部屋で遅くまでイメージしてPCで仕事を
し終えた福賀は次の日6時に日課のトレーニングをしていた。
樹木が多い空間の中は澄んだ空気で一杯だった。
空には一つの固まりになった雲が浮いていた。
「おはようございます。雲さん」
「おはよう。良い場所ができたね。ここからどんなイメージを広げて行くか
楽しみにいているよ」
抜けるような青い空をバックに白い雲が揺れていた。
「おはようございます。ジャンです。よかったら私の所で朝食いかがですか?」

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 福賀はアフリカの一部、アラブ圏の王国の空港に降り立った。
「フクガさんですか?」
「はい、フクガです」
「お迎えに来ました。王子は急用が出来ました。王宮でお待ちしています」
車に乗り込み油田が立ち並ぶ中を通りホテルやビジネスビルを抜けた。
しばらくすると洒落たアラブの王宮が見えてきた。
福賀が王宮に着くと、そこには緊迫した空気が流れていた。
国王が突然倒れ意識不明の状態だった。
 
 医師が何人も付いて必死に蘇生の手立てを施していたが効果が見られない。
周りには婦人たちが数人息を殺して泣いている。
「せっかく来ていただいたのに、こうした状態で申し訳ない」
「王子。私に気功があります。国王を床に寝かせていただけますか?」
床に寝かされた国王にまたがった福賀が心臓に向かって気を注ぎ込んだ。
次に頭部にも気を注いでいった。
その動作を何度も何度も繰り返し続ける。
国王の身体がぴくっと動く。
目を開き何事ごとかと周りを見回した。
「みんな、どうしたのか?貴方はどなたですか?」
王子が国王のかたわらによって状況を説明すると国王が大きく頷いた。

 つづく


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