SSブログ

小説「イメージ2」No:46

小説 イメージ
No:46

 福賀はヨーロッパ諸国・中近東諸国・東洋圏の諸国の首脳と会っている。
「では、不戦条約と相互安全保証条約の締結をよろしくお願いいたします」
それぞれの国と条約を締結の事務手続きを進められるようにして福賀は日本へ
帰って来た。

「こうして世界の各国と平和を共有する条約を結べばアメリカの軍事基地を
持つ意味が双方になくなり、日本はアメリカの支配から完全に開放され本当の
意味で独立出来る」

 国連では今だに日本に駐留軍を置いて植民地にしている状況に疑問の声が
あがると西欧や中近東など多くの国から非難の声が上がり始めた。
「いや、アメリカは日本と安全保障条約を交わし日本を守るために軍事基地を
置いている。日米同意の上である」
そのアメリカの弁明と取れる答えには他の国の感触は良くなかった。
「アメリカは第二次世界大戦終了後残定処理として駐留したが其れは日本が
戦争放棄による無戦国として独立を見届けるためではなかったか。その役割は
充分果たしながら今だに駐留し多くの基地を存続させ又しても統合を理由に
100年も活動できる大基地を日本に押し付けようとしているではないか」

「アメリカは基地で日本を支配して完全な独立をさせないでいるのでは」
「日米同盟とは云ってもアメリカ上位の同盟であって、同等ではないように伺
えるが如何か」
「日本の国民の多くは日本はアメリカの州ではないか、アメリカの子分ではな
いかと思っていると聞いている」
「日本を豊かにさせない策を色々な面で行なっているのではないか」
「終戦後何年も乗用車を作らせなかったり、飛行機の生産を許さなかったりと
強い抑止力で抑えていたのではないか」
「其のために生産技術が発達できなかったり、経済的にも発展できずに来た」
「其の反面余ったウランを使うように仕向けて原子力発電を開発させたりした」

 IMG_20230819_205449.jpg

「資金面でも同等とは思えない負担を日本に掛けていないか」
「米軍基地に掛かる日本側の負担は可なりアメリカ側を上回っていると思われ
アメリカの国債購入額も相当なものと聞き及んでいて、その影響は国内の国債の
購入に委ねて国家予算を組み立てている状況は異常としか言いようがない」

 こうした日本の現状に対する世界各國の認識も福賀の相手を知って嫌われない
日本外交推進の影響が出て来たと云っていいだろう。
こうして国際的に理解され真の独立国日本へと福賀のよりよい環境づくりは進め
られている。

 次はアメリカの基地のない沖縄の独立ではないか。
そしてアメリカの基地のない日本の完全独立国。
政・官・財の関係改善。
おぼろ月夜の露天風呂で福賀はイメージしていた。

 贈収賄容疑で闇雲議員と派閥の議員数人・官僚数人・企業側の役員が警視庁の
特捜2課に呼ばれた。
それぞれの家宅捜査が行われ証拠書類が押収された。
それらの行動は以前から内偵が行われて国会の質問の応酬中に一挙に行われた。

 国内の「よりよい環境づくり」は政・官・財の特権意識と利権の悪用を改める
事に目的があった。
「総理であろうと大臣であろうと、高級官僚であろうと社長であろうと其れは
組織の[役]にすぎない。主役だからと云って偉いわけではない」
これが福賀の認識なのだ。
福賀は人間が人間を支配することを嫌った。
威張る人間は大嫌いだ。
久し振りで福賀の足は銀座に向かっていた。

 IMG_20230817_134627.jpg

「えらっしゃい」
相変わらず福寿司の大将は威勢がいい。

「ご無沙汰だったじゃないか。死んじゃったかと思ったぜ」
「おいおい。そう簡単に死なさないでよ」
あうんの呼吸で女将がのれんを片付ける。
「やったね。福さん」
「やっちまった」
と福賀。
パチパチと客席から拍手が起きる。
「すかっとしたぜ。良かった良かった本当に良かった」

「次は何をやらかしてくれるんだい。おいら楽しみしてるんで」
「次ね。云わぬが花。花より寿司」
「女将!福さんが寿司だとよ」
「あいよ」
女将がお茶と日本酒を持って来る。
「女将どうした」
「OKですって。聞くだけ野暮だよ」
「ちげえねえ」
「福さん。何から行く?」
「バスが来るまでだから車庫から光り物いこうか」
「よしきた」
久しぶりで福寿司一泊温泉旅行になるようだ。

 そろそろ総理の任期が終わり衆議院は解散して総選挙に向かう。
「次の政権が決まるまでは副総理だからね。福賀さん」
それまで副総理として手伝ってほしい意味で岩上は福賀に告げた。
「ま、仕方ないでしょう総理」
大きな祭りが福賀を呼んでいた。
街全体が祭りになって屋台が広がっている。
市役所を起点に合計15基の山車が引かれて街を練っている。
所は埼玉県川越市の「川越まつり」だ。
祭りは世界の文化だ。
お囃子と笛と太鼓でワクワクする堪らないね祭りは。
他にも色々あって、例えば富山は八尾のおわら風の盆が福賀は好きだ。

「そうだね。まだまだだ。そして党としては今まで出来なかった企業献金の廃
止が出来た。君が「週刊じぶん」の市販を考え作ってくれたから出来た。
あれが育ったから企業献金廃止が出来た。省庁に監査機関を純民間メンバーで
構成して、従来の仕事をチェック出来て不正やミスを見つけられた。
官僚の優越感と特権意識を弱める事に成功した。国民と正解の距離は君がTVに
積極的に出て縮めてくれたから「自分党」も「内閣」も高い支持をいただいて
いる。
それは今までの不信感が強すぎたからで喜んでばかりではいられないと思わな
ければいけない。まだまだこれから」

「そうですね」
「もう一度、途中からではなく初めから総理を務めさせてほしいんだ」
「解りました」
公認立候補者の決定など選挙に向けての仕事が続く。
「ちょっと軽い食事を・・・」
「そうですね。忘れていました。何か食べましょう」

「今の体制ではかなりの選挙資金がいるでしょう?」
福賀は岩上に聞く。
「そうだね。出来れば金の掛らない選挙でありたいのだが」
福賀は現状では選挙に資金がいるのも仕方がないと解っている。
金のかからない選挙がこれからの課題になる。

「私が出来る範囲で党に献金しましょう」
福賀は手伝いを頼まれた時点で其のことは覚悟していた事の一つだった。
「それは有難いが、そうした負担は君に掛けたくない」
「私の推薦した候補者も何人か居ることですし、だから一時自分党に入ります」
「入党してくれるのか?」
「其の方が良いのでは?」
「それは、そうしてくれたら私は心強い」
「では、入党の手続きをして選挙資金の準備を・・・」
そう云うと福賀は宵闇の中に消えて行った。

 IMG_20230818_004625_203.jpg

「嫌われない日本をイメージした外交も歓迎されている。政・官・財の関係の
環境改善は企業献金の全廃と省庁職員の天下り禁止で進んでいる。政治家は
自己の利益を求めてはいけない。国民と国の利益のために命をかけて働く事が
政治家の使命である。選挙では真摯な気持ちで国民の皆さんに信を問わなければ
ならない。正しく裏表の無い心で国民の皆さんの信頼を得てほしい。不正を行う
候補者は即日公認を取り消し党を除名する。国民の皆さんの平和と安全のために
働く政治家を充分に自覚して選挙に当たってほしい。各自、党の資金を当てにせ
ず自己資金を元にして出来る限りの努力をするように。以上です」

 この総理の通達を見て候補者たちは今までに無い緊張感に包まれた。
「総理。この選挙は最後の選挙になるかも知れないですね」
と福賀は云う。
「多分そうなるだろう」
と岩上が受けた。

「いいんでないかい」
福賀はいつも反対ばかりしている「ともだちの党」の幹部と満月を見ながら
北海道の或る所の温泉旅館で露天風呂に入っている。
周りの岩には昨日降った雪が積もっている。
其の雪を月の光りが煌々と照らして明るい。

 福賀が野党の人たちと会うのは今日が初めてではない。
「みんなの党」の人たちとも「ともだちの党」の人たちともこうして会って
情報や意見を交換している。

「いいでないかい。コラボレーションさ」
異質な者同士が集まって一つのものを作るコラボレーションだ。

野党の連中とだけじゃない。
この後に右翼と言われている人たちとも会う事になっている。

 また、全く違う分野にイメージを広げている。
人間も動物のように冬眠出来たら荒れ果てた自然の回復が可能になる。
世界の人間が半分づつ順番に冬眠して交代しながら順繰りに生活を行えば自然
を戻すのも夢ではない。
既に或るところで密かに研究チームを作って福賀のイメージが膨らんでいる。
いずれ良い報告が来るだろう。

 つづく

nice!(70) 

nice! 70

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。