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小説「イメージ2」No:51

小説 イメージ No:51

 自然を破壊しても構わず突き進む愚か者。
自然は呆れ怒っている。

 人間は自然から生まれた生き物だから自然が大事と考えているのが福賀だ。

 縄文の神は愛の神。
しいて云えば福賀にとって神は生き物を生み出した自然。
自分たちは生き物としての人間、自然を敬い大事にする人間。

 自然は破壊してはならない。
活かす事が賢いあり方だと信じている。

 以前、何処かで地球上の人口を減らすために戦争をしていると聞いた事が
あって、なんて恐ろしい発想だろうと思った事がある。

 人口が多過ぎて自然破壊へ進むなら半分づつの冬眠はどうか?
福賀はこのイメージを科学者に伝えて研究プロジェクトを立ち上げていた。

 その研究の状況を今日聞けるかもしれないと楽しみにしてる。
今まで気になって聞いてみた事はあったが、進めていますと云われていた。

 福寿司の次男坊の料理がいくつものテーブルに並んだ。
「さ~ぁ皆さんお好きなものをどうぞ」
客が一斉に料理に向かった。
聞かれると丁寧に次男坊が説明している。

「んめぇ~」
日本から選ばれて冬眠研究チームに入った秋田の亜北が叫んだ。
福賀はそのチームの中に居た。
「で、進み方は?」
「可なり進みました」
「どの程度?」
「難病もモノによっては治癒します」
「冬眠で?」
「そうです」
「と云う事は?」
「既に冬眠は可能です」
「それは凄い。やったね。素晴らしい。次の段階は?」
「実現への準備では・・・」
福賀のパリのアトリエで行われたパーティは盛況のうちに無事終わった。 

「ちょっと出掛けて来ます」
福賀は周りの人にそう告げた。
顔には揉み上げから顎に掛けて密集した髭が生えている。
「年に一度顔を見せてくれと云われているので」
行き先はアラブ圏の王国に間違いない。

 健康上の不安で政界を引退した岩上前総理がテレビのインタービューを
受けている。
「今、福賀前副総理が次期総選挙に立候補するような感じですが?」
「知っていますよ」
「最近お会いになりましたか?」
「いや、あれ以来会っていないです」
「前総理がイメージされた”よりよい環境づくり”を引き継がれるような」
「いや、実はね”よりよい環境づっくり”は私の考えでもあるけれど彼の考え
でもあるのです」

「え!前総理だけのお考えではなかったのですか?」
「そうです。私の内閣のネーミングは彼がつけました」
「初めて伺いました」
「だから。私が緊急入院しても施政方針演説を彼が原稿無しで出来たのです」
「なるほど。あの原稿無し2時間前代未聞の演説の謎が解けました」
「私と同じ考えを持っていて感覚的に優れていて世界にも通じていたし、英語
もフランス語も堪能だったり情報は得ていましたから彼に手伝いを頼んだら副
総理でならと言われて党に了承させて彼に副総理で手伝いを頼みました」

「自分党で前総理の手伝いをした福賀さんが自分党を離れた事は?」
「それは、自分党で出来る事に限界を感じたからだと思う」
「どんな限界ですか?」
「それは此れからの福賀君の動きを見ていれば解る事でしょう。いや、今迄の
彼の仕事を確認したらイメージ出来るのでは・・・」

 空港に福賀が降り立ったのは未だ明るい時間だった。
迎えの車に乗り込み王宮に向かった。
向かい側に座って居るのは福賀より年下の王子たち。
「兄さん。メールでいろいろ有難う」
「いや~、大したこと出来なくてごめん」
「父も早く会いたくて昨日からソワソワしています」
福賀はここでは家族として迎えられて居る。

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「おお~息子よ。来てくれるのをどれほど待ったことか。よく来てくれた」
「お元気でなによりです。お父さん」
そうだ。
そう云えば福賀は両親を3歳で亡くした孤児だった。

 久しぶりの再会に国王と福賀は気持ちいっぱいのハグをした。
「君のアドバイスで思い切った環境づくりを進めている」
「そうですか。それは楽しみです」
「そうなんだ。私もワクワクしているし、息子たちも張り切ってやっている。
まさか明日帰るなんて事はないだろうな」
「明日って事はないです。三日ほど居させてください」
「三日だと。それは明日と変わりない。短すぎる」
国王の顔に寂しさが刻まれるのが解って心が痛い。
歓迎の晩さんは福賀には一年ぶりのご馳走だった。
それぞれ会えたことを喜び合って話を楽しみ時間を過ごして王宮の中の自分の
部屋に福賀は下がった。

 三人姉妹が部屋にやった来る。
「お兄様。お帰りなさい。
「君たちも帰っていたんだ」
「そうです」
彼女たちの声がハモって美しい。
三姉妹は三つ子だから凄く気が合って通じ合えるようだ。
吹き抜けになった天井の窓から月の光りが福賀の身体に降って来る。

「私が此処に帰るの解っていた訳じゃないよね?」
「解っていました」
「どうして解ったの?」
「何となく」
「三人とも?」
「そう三人とも」
「何か私に・・・?」
三人は顔を見合わせて一緒に云った。
「お兄様とお風呂に入りたいから」
「此処で?」
「いいえ。パリのお兄様のアトリエのお風呂で」

「お兄様。ここからパリに行かれるのでしょう?」
三人は三様に感がよく働く。
「私たちも一緒にパリに行きます。いいでしょう?」
三人の中で一番の姉になるイナが聞いて来る。
「パリで待っている人がいます」
「私を?」
「そうです」
「君たちと関係のある人?」
「そうです」
「誰かな?」
三人はお互いに顔を見合わせミステリアスに微笑んだ。

 福賀は一日延ばして四日目の夜の便でパリに戻った。
勿論三つ子の三姉妹も一緒だ。

「誰も待って居ないじゃないか?」
「今に来ます」
三姉妹はまたミステリアスに微笑み合う。
「イナ、ウナ、エナは幾つになったの?」
「22歳になりました」
「そう。大学を出たら何をしますか?」
「イナは父の元で手伝いをします」
「ウナはパリに残って文化的な分野で活動したいと思っています」
「エナは東洋の国に関心があるので出来たら日本に行って仕事をしたいと思っ
ています」

 福賀のアトリエには20人は入れる温泉露天風呂が付いている。
王女たちの希望で初めて福賀は一緒に入ることにした。
以前に王宮に行った時は国王が倒れて福賀が気功で一命を救った事があったが
その時は王女たちは居なかった。

 この王女たちの力でアラブも変わって行くのだろうと福賀は思いながら彼女
たちが並んで入っている湯船の中に入って行った。
湯面が揺れて三人の王女も揺れている。
揺らしたのは福賀。
三人の前を泳いでいる。
ローマ彫刻のような洗練されて筋肉質の身体とその背中に彫られた花びら散る
中を登って行く龍に彼女たちは息をのみ目を見開きながら眺め固まっている。

「何で私とお風呂に入りたかったの?」
「何でだか解らないけど何故かそう思いました」
「そうです」
「そうです」
「一緒に入って解りました。このエキサイティングなお兄様を知りたかったの
だと思います」
「そうです」
「そうです」
日本の刺青の話をして彫られた経緯を説明してどんな事でも命の尊さを彼女た
ちに話して聞かせた。
「お兄様。ハグしていいですか?」

 つづく

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小説「イメージ2」No:50


小説 イメージ No:50

 岩上総理を最上階の自分の部屋に案内をした。
「此処が私の秘密基地です。此処には温泉露天風呂も付いて居ます」
「ほ~これは驚いた。いつから此処に?」
「雪月花の専務になって間もないころでした。ふと海が見渡せる場所に行きた
くなって伊東に来ました。ちょっと山を登ったところに此のホテルが目に付い
たので来て見たら女将と気が合って色々アドバイスを求められて関わったので
其の代償と云ったら何ですがこの部屋を貰いました」

「なるほど。それでよく解りました。良い出会いだったのですね」
「そうなんです。此処でフランスの美術家たちと知り合い世界に広がって行き
ました」
「大体が大学時代から始まっている様ですね」
「私は3歳で両親を失って叔父に育てられましたが孤児です。財産は両親から
受け継いだ資質と可能性です。無形の財産の発掘に一生懸命に没頭して出来る
限り力を付けました.。色々ありましたが、化粧品の仕事を望んでいて雪月花
にスカウトされました。」

「貴方に興味を持つ様になったのは元旦に出た雪月花の新聞広告が其の始めだ
ったと思います。今までに誰からも受けたことのない衝撃でしたから。あれが
福賀貴義に関心を持たせてくれました。そして貴方のよりよい環境づくりです。
あらゆる事につながる広い意味をもった理念が私自身の考えとつながりました」

「このホテルに関わってフランスの美術家と知り合って行動範囲が欧州を始め
アラブ園にもつながり、それから中国の中枢につながりました」

「福賀さんにはタラレバが無いんですね」
「はい。それはしない事にしています」
「誰でも私でも、あれをしておいたら、あれをやっていればと後悔があります」
「そうですね。一介の孤児として其れはしないで生きようと決めました」
「だから精神的にも肉体的にも強い福賀貴義が存在している」
「まだまだですが後悔をしたくないです」
「年齢は関係なく福賀君ではなく福賀さんって呼ばせてもらいます」
「総理もかなり面白い人ですね」

「特別って良いとは思っていないのですが福賀さんの温泉露天風呂は特別です」
「入りましょう。岩上さんと裸の付き合いになります」
「そうですね。これからもよろしく」
「私の方もよろしくです」

「あの時は肩の部分だけでしたが全身を拝見して初めて刺青に神々しさを感じま
した。彫った五代目彫辰さんの魂が彫り込まれて。福賀さんに無理に頼んだ償い
に彫った気持ちが伝わって来ました」

「こんなの親が産んでくれた身体に彫りやがってって思いましたよ。でも、彼の
気持ちも解るんです。この世界は陰の世界で保存されています。戦後入って来た
タトゥーとは違う日本独特のモノで精神的な意味合いが強いです」

「日本の政治家でも彫り物を背負っていた人が居たと聞きます」
「そうですか。昔は表だったものが今は裏ってありますね」
「そうです。難しいところです」

「ある以上。ある事を不思議な世界として密かに楽しんでもらおうかと思って
福寿司の温泉一泊旅行で一緒した人たちと此処の女将さんに頼んで貸切にして
もらって入っています」
「そうでしたか」

「失礼します」
「貴方は?」
「はい、バスの添乗員山谷です。福賀副総理にお願いして参りました」
「福賀副総理と入ったことあるの?」
「はい。福賀専務さんの時になんどもご一緒させていただきました。それ以外
では岩上総理が初めてです」

「え~そうだったの?」
「はい」
「他にもいるのかな?」
「福賀専務さんとこうした裸の付き合いをされた方ですか?」
「そう」
「いらっしゃると思います。限られた信頼出来る人たちが・・・」
「福賀さんどうなの?」
「山谷の云う通りですよ。此処には少ない限られた人。貸切にして大浴場では
可なり多くの人たち」

「今日は福賀さんのお誕生日でしたがお祝いもしてなくて申し訳ありますん」
「そうだった。いつも頼みごとばかりで慌ただしくて申し訳ない。改めてお誕
生日おめでとう」
「私もあわただしくて・・・お誕生日おめでとうございます」
「君もか?」
「はい」

「あの~総理。龍が温泉を泳ぐの見たことあります?」
「ない」
「見たいですか?」
「見たいね」
「総理が見たいそうです」
「山谷。君は気が利きすぎですよ。ではお祝いに龍を泳がせて見ましょうか」
自分でお祝いにっておかしいでしょう。
空の月もリクエストをするように輝きを増したようだ。
程よく温まった福賀の背中は桜の花びらがほんのり薄桃色に染まっている。

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 パリのポンピドー美術館で「自然らしい自然」をテーマにした福賀の世界展
が開かれた。
美術館の壁面には「自然らしい自然」を描いた福賀の作品が飾られている。
部屋の空間には巨大な毒キノコをイメージする物体が置かれている。
これも福賀の作品。

 その又別の空間をねって阿波おどり連が部屋から部屋を渡りながら踊っている
強烈な太鼓の音が消えると越中八尾のおわら風の盆を踊る会が現れて胡弓の音色
が後を追う。
夜になるとバリ島のバリ舞踊のサダ・ブダラ・ラティ・ヤマサリなどの舞踏団が
ケチャの中央で踊る。
美術館のいくつもの部屋を使って福賀の作品と音楽と踊りのコラボレーションが
1ヶ月続いた。

 その間の夜には福賀のアトリエでパーティが行われている。
そこには様々な個性が集まってくる。
此処の建物のオーナーでアラブ圏の王子もその姉妹三人も参加して福賀に怪しい
視線を送っているし、国連事務総長のカタル女史も福賀にサインを送っている。

 パリで日本料理店を開いている福寿司の次男坊がやって来た。
「福賀前副総理お久し振りです。今日は目一杯楽しんでいただこうと店を閉めて
やって来ました。後ほど料理を並べたいと思います」
「よろしく。厨房は解っていますね」

 次々と色々な人たちが集まって来た。
パリ航空の社長もやって来た。
「よろしく」
フランス美術連盟の会長が、フランス政府高官が、アラブ圏の大使が、中国の
高官が、イギリスの大使がなどなど。
そして
「福賀さん。お久し振り・・・」
パリ画廊のオーナーが・・・。
「お待ちしていました」

「おお!キキいつも有難う」
キキはパリ航空の社員で美術連盟の人たちを日本美術ツアーのコンダクター
として伊東温泉・山海ホテルに来た時に偶然居合わせた福賀と会ってお互いに
協力いあっているエスパーの一人だ。
このパーティも福賀のために仕組んでいた。

 そして福賀が待っていたグループがやってきた。
今日来ている各国高官の国から選ばれた極めて優秀な科学者たちだ。
「福賀さん。良い知らせがあります」
「そう。それは嬉しい」
「後で話します。楽しみにしてください」

 つづく

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小説「イメージ2」No:49


イメージ No:49

 その 緊急の電話は総理の部屋からだった。
総理室に続くドアを開けて入って行くと岩上総理が絨毯の上に寝かされていた。
側にもう一人のf副総理十和田と秘書が付いていた。
緊急のサインは十和田から発信されたものだった。
「以前と同じ心筋梗塞と思われる」
「緊急の対応は?」
「した」

福賀は以前のように医師が来る前に出来るだけの事をしなければと動いた。
「少し離れていてください」
と十和田に云って岩上にまたがった。
静かだった部屋の空気が床から天井に沸き上がって渦を巻いた。
此処の部屋は3階にある。
そこまで地中の気が上がってきた。

 福賀は懸命に気を吸い上げて集め岩上の心臓をマッサージしている。
こうした状況はこれで2度目だ。
これが最期だと福賀は感じていた。
それだけに何としても助けたい。
「ふ~ぅ」
「ふ・く~」
「ふ・く・が~~」
止まっていた心臓が機能し始めて来たようだ。
その瞬間に福賀は絨毯の上に音を立てて仰向けに倒れた。
意識はあるが呼吸は荒い。
殆どの気を注ぎ込んでしまったらしい。
福賀は目を閉じて動かない。

 医師が着いた感じを霧の中で感じていたように福賀は思ったらしい。
気がついた時には岩上と並んで福賀は一番嫌いな点滴をされていた。
前の時は病気の事を福賀に替えて逃れたが今度はそう云う訳にはいかない。

 一命を取り留めた岩上は自宅にいた。
「福賀さん、有難うございます。2度まであの人の命を救っていただき何と
お礼申し上げて良いか」
「奥さま。ご心配だったでしょう。岩上総理は日本を背負っていらっしゃった
のですから、その責任は計りしれないくらい重いはずです。とっても真面目な
方だから精神的な負担が溜まったのでしょう」

「福賀さん。うちの人にこれ以上の働きは無理のように思うので私も云っている
のですが大丈夫と云って聞いてくれません。福賀さんから岩上にもう十分だから
辞める様に云っていただけませんか?」
「そうですね。私も十分過ぎると思います。私からお願いしましょう」
福賀は意を決して岩上の部屋に入って行った。

「総理。ご家族が心配していらっしゃいます。これ以上無理をなさっても良い結
果は得られにと思います。心臓に疾患がある事は国民の知るところとなりました
ので引退なさるのが最善かと思います」

「そうか。福賀君がそう云うなら間違いないな。私は私の事を解っっていないの
かも知れない。君が云う通りだ。そうしよう」

「お疲れ様でした総理」
「いや、君には無理なお願いをして申し訳なかった。でも、君に手伝いを頼んだ
のは正解だった」
「有難うございます」
「で、どうしたら良い?」
「総理は党から離れ、政界から引退された方が良いです」
「君は?」
「私は岩上さんから手伝いを頼まれたから居る人間ですから、依頼主が居なく
なったら居る必要がなくなります。私は自由にさせていただきます」

「自由か。そうだね。長い間しばっていて申し訳ない。お世話になりました。
本当に有難う」

 岩上は党に心臓に疾患がある事を理由に離党届を出し、総理を辞任すると
心に決めた。
福賀も自分党を離党し副総理を辞して自由になると心に決めた。

「総理お疲れ様でした。リフレッシュに温泉でも行きますか」
「良いね福賀君。どこか良い温泉あるんかい?」
「ありますよ。お任せください。では、私について来てください」
「あぁ、ついていきましょう」

 黒いポルシェに岩上を乗せて取り敢えず銀座の福寿司へ走らせた。
「う~ん流石だな~。福賀君いつも私の仕事を手伝ってくれてる時とは感じが
ちがうね。颯爽としてる」
「でも、仕事で駆け回る時はこうしていました」
「よくやってくれました」
「此処に留めます」
そこは銀座の駐車場。
「少し歩きます」
着いたのは福寿司。
のれんを割って福賀が先に入る。
 
「えらっしゃい」
いつも変わらない大将の威勢のいい声が気持ちいい。
「おお!足がちゃんと付いてるじゃねえか!生きてたんだね」 
「生きてて悪かったね」
「悪かったさ(笑)おや?一人じゃないんだ」
「そうだよ。よろしく」

 そんな嬉しくてたまんない大将とのやりとりを伺いながら女将がのれんを仕舞
いに動く。
そして、例の2箇所に電話を入れる。
岩上は初めて福賀の別の顔を見るように目を丸くしている。
「福さんのお知り合い?」
「そうです。私が大変お世話になった方で」

「そうですか。福賀のお世話は大変だったでしょう。ま、ここは自分の実家と
思って気楽にやったくださいって云っても此れからの事で、今日はちょっと~
忙しいですが・・・」
「女将~?」
「OKですよ」

 今日はいつもより時間が早い。
「この方は病み上がりだから・・・お茶にして」
「お茶?」
「福さんは?」
「私はあの日本酒」
「いいのかね?」
「いいんです」

 そんな打ち解けた雰囲気で寿司を楽しんで居ると。
「バスが来ました」
女将がしらせる。
「ってことで、お客さん。例の福寿司一泊温泉旅行だから、行く人は家に連絡
入れてね。行かれないお客さんは気をつけて帰ってまた来てね」
岩上が怪訝そうに福賀の顔を伺っている。

 まだ総理と副総理だがそれがどうって事ないんだけど福寿司の世界では。
そうは云っても並みの二人じゃないのは誰もがよく知っている。
片や自分党をひっくり返した岩上、片や原稿無しで代理の所信表明演説をした
福賀なんだから其れは誰だって興味津々でしょう。

「って事で此れから伊東温泉に行きます」
「え~~~っ」
岩上は思いもしなかった展開にびっくりだ。

「さあ。慌てず急がずバスに乗ってください。何だか知らないけど其処の二人
勿体ぶらないで乗って。みんな乗れずに困っています。全く世話がやけるった
らありゃしない(笑)」
「勿体ぶったりしてませんが(笑)」
「冗談もわかんねえ。いいから乗って乗ってください」
他の客がどっと笑う。

「参ったな~ぁ」
「やられっぱなしで・・・どう返していいか解りません」
「庶民と離れて居たって感じしませんか?」
と福賀。
「そうだね。確かに」
「こっちもどう面倒みたらいいか解りません」(笑)
久しぶりの山谷が凄く嬉しくてはしゃいでいるって誰にも感じられている。

 岩上に続いて福賀が乗り込むと福寿司のお客が次々に乗り、福寿司の連中が
乗り込んで最後に添乗員の山谷が乗り込んでバスは出発。
「本日は東西観光をご利用いただきまして有難うございます。これから福寿司
さんご常例の伊東温泉一泊旅行で山海ホテルに向かいます。ちょと其処のそう
其処の大きなおじさん」

 しょっぱなから添乗員に声を掛けられ総理、またビックリ。
「私かい?」
「そうです。どっかで見た覚えがあるんだけど。あなた俳優さん?」
「俳優?私が?」
「そう。悪役じゃあなくて良いもんの二枚目俳優さんじゃないの?」
「私が良いもんの二枚目俳優?冗談でしょう」
「ほんとイケメンだもん。その隣に座ってる貴方だれ?」
福賀がいつもと違って本気になる。
「馬鹿なこと言ってんじゃない。良い加減にしなさい」
「あれ~あんたは人に指図するほど偉いんか?」
しまった。
やっちまった。

 山谷に乗せられたと福賀は思った。
「あ~申し訳ない貴方のジョークに気付かずマジに乗っちゃってお恥ずかしい」
「さすが福賀さん」
乗務員の顔がニコニコ嬉しそうに微笑んだ。
「発声練習はこの位にいたしまして、今日は特別ゲストと云って良いでしょう。
岩上総理と福賀副総理をお迎え出来て大変嬉しく思っております。多分皆さんも
私と同じ気持ちでいらっしゃるのではないでしょうか」
大きな拍手がそれに答えた。

「運転手も緊張しているでしょう。運転は当社の取締役車。添乗させていただく
私も当社取締役山谷です。明日まで皆さんとご一緒させていただきます。どうぞ
よろしくお願いいたします」

 いつもの様にサービスエリアで休憩をとって後半も車の安全運転で無事に山海
ホテルに到着した。

「ようこそ山海ホテルへお越しくださいました。福寿司御一行様。そしてお客の
皆様。そして特別ゲストのお二人様お疲れ様でございました」

 もう、全て連絡済みで此れからの手筈は整っている。
何故か福賀が温泉に入りたくなって此処に来ると空には月が煌々と輝き、一つの
雲が側に付き添っている。

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 つづく

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小説「イメージ2」No:48

小説 イメージ No:48

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第455号「上手ってなんだ!」2023-08-23
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イメージ No:48

「戦略は?」
「其れを云っては戦略になりません」
「そうですか。副総理はなかなかの戦略家って感じがしますが」
「さ~どうでしょう。私の戦略はイメージでして」
「福賀副総理が基本としているものは?」
「私が 基本としていものは自然と人間・生き物を基本に考えています」
「自然に対しての心は如何?」
「謙虚でありたいですね」
「政治的には?」
「自然を生かす方向で関わりたいです」
「自然を汚したら?」
「自然が汚れたら生き物は滅びます」

「自然を汚す事は?」
「生き物を殺す事です」
「空気も水も海水もですね」
「そうです」
「生き物は自然次第ですね」
「海水を汚せば魚は死にます」
「毒された魚を食べたら?」
「人間が侵されます」
「自然を汚す人間を自然はどう見てますか?」
「愚と見てるでしょう」
「なかなか自然に 賢いと思われそうにないですね」
「そうですね」
「放射能で汚れた水はどうされますか?」
「 海に汚れた水は流しません。浄化して処理します」
「有難うございました」 

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「パソコンが中々思うように動かなくなったのでネット契約元にお助けの電話
をしようとしたら急に動き出しました。解ったんですかね」
「解ったのでしょう」
「人間も機械も 心があるんですね」
「さ~それはどうか解りません」

 一般には健康な肉体と健全な精神と云われているが福賀は健全な精神と健康な
肉体と思っている。
身体は大事だが精神の方が先ず先行して大事だと思っている。
要するに全て精神(メンタル)によるところが大きいと考えている。
技術は大事だが愛がもっと大事。
そういう人なのだ。

 福賀は武道から精神の重要さを学んでいる。
彼のブレーンには様子を見て精神領域に入り込んでメンタルの強化を図っている。
勿論、本人承知の上でだが・・・。

 今、福賀は女性経営者の集まりに呼ばれて其の中に居て誰とも視線を合わさず
に話をいている。
此処で何を話しているのか。
それは「プラスになる戦略」についてだ。

「なかなかイメージは思い通りにはいきません」
「そうですね。そうだと思います」
「でも、諦めずに戦略を練る練習を重ね失敗をしながら経験を積んでいく事が大
事です」

「先づはイメージを描くことからですね」
「どんなイメージを描くか?」
「そうです。そこに考え方や発想が必要になります」
「プラスを創る」
「何が何にプラスか?」
「そうです」
「それは人間が人間に対して?」
「それは自然に対しても・・・」
「一番大切な事ですね」
「我々は生物ですから」

「戦略は今まで男性のモノかと思っていました」
「そんな感じもありますね」
「戦略って云うと何か悪い企みのようなニュアンスがありました」
「そうですね」
「でも、プラスになる何かをしたいとイメージして、そのイメージを形にする
ために必要な方法を考えれば、其処に戦略が生まれます」
「何をどうして、それからどうしてと考えていく其のために必要なもの、それが
戦略ではないですか?」

「そうです。云い換えれば戦略はイメージを形にする下描きです」
「そして戦略をねって形を作っていく」
「それも、国内だけではなく世界の中で・・・」
「思い通りにいったら面白くないでしょう」
「たまには思い通りにいってほしいです」
「それはそうだけど・・・」
「いかないものですね。思い通りには」
「そうですね」
「そこで必要なのが戦略です」

 少し、いや大分年齢を重ねたパソコンを此処のところ酷使した感があります。
赤・黄・緑が入った可愛い円がくるくる回る事が多くなり具合よくないです。
今日はこの辺で止めときます。

 つづく

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小説「イメージ2」No:47


No:47

 選挙運動の期間は秋口でちょうど祭りが行われている最中だった。
北海道から青森そして岩手と宮城へ新潟に飛んで富山はおわら風の盆おどり
に参加する事で夫々の土地の人たちに溶け込んで行った福賀だった。
一度も宣伝カーには乗っていない。

 選挙運動は岩上総裁と当の幹部が真摯に国民の安全と国の平和を訴えてる
誠実さが国民に認められて自分党の単独過半数獲得に繋がって岩上総理大臣
が新しく誕生した。

 自分党の大勝利は福賀の力によるところ大である事は周知の事実。しかし
福賀は何処でも誰にも岩上総理の理念と働きと人徳と云っている。
「これで岩上総理への手伝いも出来た。でも、自分党で出来る事もそろそろ
限界かも知れないな」
選挙が終わり「嫌われない日本」と「よりよい環境づくり」として基地なし
「日本完全独立」を進めている福賀だった。
「そろそろ1年になりますか」

 外では花火大会の大輪の花火が打ち上げられていた。
近年、浴衣が好かれて男性も着るようになったりして女性にならって良い。
祭りも自分の街だけではなく全国の県は世界の国々との連帯が盛んになった。
福賀は副総理室の窓からイメージして其れ等の情景を楽しんでいた。
岩上総理の部屋から緊急のベルが鳴ったのは其の時だった。

 総理室への連絡ドアを開けると総理が胸に手を置いて床に倒れていた。
秘書官が総理は執務をしていて急に倒れたと福賀に告げた。
「十和田副総理に連絡は?」
「しました」
隣の部屋から十和田が入って来た。

「十和田さん、総理は心筋梗塞です。救急車を内密で呼ばなければ」
「そうだな。知られてはまずい」
救急車が呼ばれた。
既に其の間に福賀は総理の身体にまたがって気を送り続けていた。
5分ほど送り続けると総理が’ふぁ~と息をはいた。
「総理。解りますか?福賀です」
「あ~福賀君か」

 岩上の意識が戻ったようだ。
それでも福賀は岩上の胸のあたりから頭部に掛けて気を送っている。
「私を引っ張ったのは君だったか」
「そうですよ。よく帰っていらっしゃいました」
「極彩色の光が私を呼んでいた。もう少しで吸い込まれるところだった」
「大変ですがこっちに帰っていただかないと困ります」
「ハハハそうか。そうだったね」

 総理が倒れたとなっては具合が悪い。
「総理は少し休まれたら大丈夫でしょう。私が過労で倒れた事にしましょう」
総理と十和田副総理が顔を見合って頷きあった。
「そうしてくれるか」
この件は極秘にされて福賀は部屋から救急隊員に運ばれて病院に搬送されて
行った。

 空には秋を知らせる雲がいっぱいに散らばっていた。
岩上総理は総理官邸に帰り、医師と看護師に診察を受け披露回復の点滴を受け
る事になった。
福賀は検査を受けて少し風邪気味のようだと診断されて薬を出してもらい帰る。

 福賀副総理が救急車で運ばれ入院と外部にもれ(意図的に漏らす)記者たちが
押し寄せて来た。
「先ほど帰えられました」
と病院側のコメントで記者たちは・・・。
「どちらに?」
と聞くが其れはまた愚問だった。
「解りません。福賀副総理にお聞きください」

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 其の頃すでに愛車が眠っている駐車場から福賀を乗せた黒のポルシェが静かに
滑り出していた。
家には帰らず今日は自分の秘密基地に向かっている。
途中のSAで必要な連絡をとり、後でメールしてほしいと頼み、車は伊東温泉・
山海ホテルに向かって走って行く。

 山海ホテルに着き地下の駐車場から直接最上階の自分の部屋の入った福賀は
女将に直通の電話を入れた。
「はい。直ぐ伺います」
福賀は取り敢えず部屋付きの露天風呂の入る。
暗い海に向かって大きく手を広げ空を仰いだ。

「失礼します」
女将がワゴンに冷やされたワインと洒落た肴を乗せて入って来た。
「有難う」
福賀は湯船から上がり其のまま3台のPCに向かって行き夫々のPCを開く。
メールボックスに入っている何通ものメールを確認する。
女将がシルバーグレーのバスロープを福賀に。
「有難う」
「お疲れ様です。私もお湯に浸かりたくなりました」
女将の身体が福賀の背に触れて来る。
「どうぞ。女将もお疲れ様」

 向き直った福賀は其の時初めて女将と目を合わせた。
福賀の目が女将を吸い込み始め、サイコダイビングに入った。
「私の方の事は思ってくれていれば感じられるから思ってください」
「解りました」
「パリ航空のキキも同じだから思うだけで大丈夫。通じます」
「はい」
「気持ちで連絡を取り合いましょう」
「了解です」
何の事か解らない会話だけれどお互いエスパー同士なんだね。

「してみますか?」
「はい」
女将は福賀がメールの返事を書いて送っている間に湯に入る支度をしていた。
福賀が仕事の用事が済むのを待って湯に浸かりに行く。
「そう。こう云うこと」
二人は背中を流し合って肴つまみワインを楽しんだ。
「今度いつ此処へ?」
「う~んです」
「そうですか」
「元に戻るか、先に進むか」

「其れはそうと、女将大分気を使っているようだね」
「以前のように専務さんって呼ばせてください。私は何も隠せませんね」
「少しい良いですか。横になって」
「はい。こうですか?」
「そう。其れで良いです。気を送ります」
福賀の例の気の注入が始まる。
おいおい岩上総理にして来たばかりじゃないか。
まず頭の両端から、そして胸は離れた上から次は腰これは骨盤辺りを斜め上
から手を離し気味に気を注いでいった。

 アラブ圏の国王がそして岩上総理が心筋梗塞で倒れた時に三途の川の手前
から福賀が強い超人的な力で連れ戻したあの気を初めて女将に注いだ。
湯上りの身体に生気が蘇ったように薄い桜色が浮き上がって来た。
「有難うございます専務さん。長年の気疲れが取り去られた感じです」
「良かった。女将には色々お世話になりっぱなしだから」
「そんな事云わないでください。専務さんのお陰の方が遥かに大きいです」

 そう云えばこの山海ホテルは福賀が関わって今の姿になった訳だからね。
女将の気持ちは勿論それだけではなさそうだけど。

 としても人間も動物も植物も全て生あるものは持ちつ持たれつですね。
岩上に頼まれた手伝いは十分に果たして自分党の改革出来て総理大臣に出来た。
もう少し頼むと云われ手伝う事にした。
今までの政府のあり方と官僚のあり方検証して改め始めた。
官界の方は民間人で構成した監査機関を設けて不正があったら洗い出して
告発すろ。

 政府を構成する与党の派閥にもメスをいれ、政治を私物化している権力者を
告発して潰していって国民と懸け離れた状況を直している。
其の一つが自分党の最大派閥闇雲派の会長の告発だった。
その後、自分党の中も利権目当て議員とそうでない議員に色分けされていった。
岩上総理の健康状態も気になる。
早々に引退を考えてもらった方が良いのではないかと福賀は思い始めた。

 定例の記者会見に福賀が出ている。
「常に良い環境を求めています」
「悪い環境を是正いてからですね」
「そうです。私は絵そ描くので、キャンバスに向かってイメージを形にして行き
ます。画面の中でイメージの環境を出来るだけ良い感じにしていかないと気持ち
良く進められません」
「良くない感じになったら?」

「思い切って描き直します」
「経営にしても云えますね」
「政治の世界でも同じですね」
「そう。描いたものが必ずしも良いとは限りません」
「折角描いたのに?」
「そう。折角って無いのです。求めるものと違えば其れを大事にして何とかしよ
うとしても良くなりません。描き直す思い切りが大事です」

「勿体ないとは?」
「そんな事は思いません。折角だから何とかしようとしても、方向が違えば悪い
方向にどんどん行ってしまうでしょう。描き直す、何度でも描き直す。その積み
重ねが大事だと思います」
「官僚の環境も描き変えを?」
「そうですね。意識改革を始めています」

「福賀副総理の分子が可なり居たりして?」
「戦略は言葉ではなく事実を作りながら進めて行くと良いですね」
「特権意識は?」
「そうです。特別な権力を持っているって意識を直さなければいけないでしょう。
人間形成の敵である優越感は良くないですね。同じ人間同士で人を見下げる意識の
働きですから良くないです」
「それが福賀さんの意識改革ですね」
「そうです」
「それは?」
「今まで院外で話し合って来ました」
「何人の官僚と?」
「何人もの官僚とです」
「今の官界は壊れますか?」
「壊れるでしょう」
「いつ頃?」
「近いうちに」
「戦略は?」

 つづく


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小説「イメージ2」No:46

小説 イメージ
No:46

 福賀はヨーロッパ諸国・中近東諸国・東洋圏の諸国の首脳と会っている。
「では、不戦条約と相互安全保証条約の締結をよろしくお願いいたします」
それぞれの国と条約を締結の事務手続きを進められるようにして福賀は日本へ
帰って来た。

「こうして世界の各国と平和を共有する条約を結べばアメリカの軍事基地を
持つ意味が双方になくなり、日本はアメリカの支配から完全に開放され本当の
意味で独立出来る」

 国連では今だに日本に駐留軍を置いて植民地にしている状況に疑問の声が
あがると西欧や中近東など多くの国から非難の声が上がり始めた。
「いや、アメリカは日本と安全保障条約を交わし日本を守るために軍事基地を
置いている。日米同意の上である」
そのアメリカの弁明と取れる答えには他の国の感触は良くなかった。
「アメリカは第二次世界大戦終了後残定処理として駐留したが其れは日本が
戦争放棄による無戦国として独立を見届けるためではなかったか。その役割は
充分果たしながら今だに駐留し多くの基地を存続させ又しても統合を理由に
100年も活動できる大基地を日本に押し付けようとしているではないか」

「アメリカは基地で日本を支配して完全な独立をさせないでいるのでは」
「日米同盟とは云ってもアメリカ上位の同盟であって、同等ではないように伺
えるが如何か」
「日本の国民の多くは日本はアメリカの州ではないか、アメリカの子分ではな
いかと思っていると聞いている」
「日本を豊かにさせない策を色々な面で行なっているのではないか」
「終戦後何年も乗用車を作らせなかったり、飛行機の生産を許さなかったりと
強い抑止力で抑えていたのではないか」
「其のために生産技術が発達できなかったり、経済的にも発展できずに来た」
「其の反面余ったウランを使うように仕向けて原子力発電を開発させたりした」

 IMG_20230819_205449.jpg

「資金面でも同等とは思えない負担を日本に掛けていないか」
「米軍基地に掛かる日本側の負担は可なりアメリカ側を上回っていると思われ
アメリカの国債購入額も相当なものと聞き及んでいて、その影響は国内の国債の
購入に委ねて国家予算を組み立てている状況は異常としか言いようがない」

 こうした日本の現状に対する世界各國の認識も福賀の相手を知って嫌われない
日本外交推進の影響が出て来たと云っていいだろう。
こうして国際的に理解され真の独立国日本へと福賀のよりよい環境づくりは進め
られている。

 次はアメリカの基地のない沖縄の独立ではないか。
そしてアメリカの基地のない日本の完全独立国。
政・官・財の関係改善。
おぼろ月夜の露天風呂で福賀はイメージしていた。

 贈収賄容疑で闇雲議員と派閥の議員数人・官僚数人・企業側の役員が警視庁の
特捜2課に呼ばれた。
それぞれの家宅捜査が行われ証拠書類が押収された。
それらの行動は以前から内偵が行われて国会の質問の応酬中に一挙に行われた。

 国内の「よりよい環境づくり」は政・官・財の特権意識と利権の悪用を改める
事に目的があった。
「総理であろうと大臣であろうと、高級官僚であろうと社長であろうと其れは
組織の[役]にすぎない。主役だからと云って偉いわけではない」
これが福賀の認識なのだ。
福賀は人間が人間を支配することを嫌った。
威張る人間は大嫌いだ。
久し振りで福賀の足は銀座に向かっていた。

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「えらっしゃい」
相変わらず福寿司の大将は威勢がいい。

「ご無沙汰だったじゃないか。死んじゃったかと思ったぜ」
「おいおい。そう簡単に死なさないでよ」
あうんの呼吸で女将がのれんを片付ける。
「やったね。福さん」
「やっちまった」
と福賀。
パチパチと客席から拍手が起きる。
「すかっとしたぜ。良かった良かった本当に良かった」

「次は何をやらかしてくれるんだい。おいら楽しみしてるんで」
「次ね。云わぬが花。花より寿司」
「女将!福さんが寿司だとよ」
「あいよ」
女将がお茶と日本酒を持って来る。
「女将どうした」
「OKですって。聞くだけ野暮だよ」
「ちげえねえ」
「福さん。何から行く?」
「バスが来るまでだから車庫から光り物いこうか」
「よしきた」
久しぶりで福寿司一泊温泉旅行になるようだ。

 そろそろ総理の任期が終わり衆議院は解散して総選挙に向かう。
「次の政権が決まるまでは副総理だからね。福賀さん」
それまで副総理として手伝ってほしい意味で岩上は福賀に告げた。
「ま、仕方ないでしょう総理」
大きな祭りが福賀を呼んでいた。
街全体が祭りになって屋台が広がっている。
市役所を起点に合計15基の山車が引かれて街を練っている。
所は埼玉県川越市の「川越まつり」だ。
祭りは世界の文化だ。
お囃子と笛と太鼓でワクワクする堪らないね祭りは。
他にも色々あって、例えば富山は八尾のおわら風の盆が福賀は好きだ。

「そうだね。まだまだだ。そして党としては今まで出来なかった企業献金の廃
止が出来た。君が「週刊じぶん」の市販を考え作ってくれたから出来た。
あれが育ったから企業献金廃止が出来た。省庁に監査機関を純民間メンバーで
構成して、従来の仕事をチェック出来て不正やミスを見つけられた。
官僚の優越感と特権意識を弱める事に成功した。国民と正解の距離は君がTVに
積極的に出て縮めてくれたから「自分党」も「内閣」も高い支持をいただいて
いる。
それは今までの不信感が強すぎたからで喜んでばかりではいられないと思わな
ければいけない。まだまだこれから」

「そうですね」
「もう一度、途中からではなく初めから総理を務めさせてほしいんだ」
「解りました」
公認立候補者の決定など選挙に向けての仕事が続く。
「ちょっと軽い食事を・・・」
「そうですね。忘れていました。何か食べましょう」

「今の体制ではかなりの選挙資金がいるでしょう?」
福賀は岩上に聞く。
「そうだね。出来れば金の掛らない選挙でありたいのだが」
福賀は現状では選挙に資金がいるのも仕方がないと解っている。
金のかからない選挙がこれからの課題になる。

「私が出来る範囲で党に献金しましょう」
福賀は手伝いを頼まれた時点で其のことは覚悟していた事の一つだった。
「それは有難いが、そうした負担は君に掛けたくない」
「私の推薦した候補者も何人か居ることですし、だから一時自分党に入ります」
「入党してくれるのか?」
「其の方が良いのでは?」
「それは、そうしてくれたら私は心強い」
「では、入党の手続きをして選挙資金の準備を・・・」
そう云うと福賀は宵闇の中に消えて行った。

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「嫌われない日本をイメージした外交も歓迎されている。政・官・財の関係の
環境改善は企業献金の全廃と省庁職員の天下り禁止で進んでいる。政治家は
自己の利益を求めてはいけない。国民と国の利益のために命をかけて働く事が
政治家の使命である。選挙では真摯な気持ちで国民の皆さんに信を問わなければ
ならない。正しく裏表の無い心で国民の皆さんの信頼を得てほしい。不正を行う
候補者は即日公認を取り消し党を除名する。国民の皆さんの平和と安全のために
働く政治家を充分に自覚して選挙に当たってほしい。各自、党の資金を当てにせ
ず自己資金を元にして出来る限りの努力をするように。以上です」

 この総理の通達を見て候補者たちは今までに無い緊張感に包まれた。
「総理。この選挙は最後の選挙になるかも知れないですね」
と福賀は云う。
「多分そうなるだろう」
と岩上が受けた。

「いいんでないかい」
福賀はいつも反対ばかりしている「ともだちの党」の幹部と満月を見ながら
北海道の或る所の温泉旅館で露天風呂に入っている。
周りの岩には昨日降った雪が積もっている。
其の雪を月の光りが煌々と照らして明るい。

 福賀が野党の人たちと会うのは今日が初めてではない。
「みんなの党」の人たちとも「ともだちの党」の人たちともこうして会って
情報や意見を交換している。

「いいでないかい。コラボレーションさ」
異質な者同士が集まって一つのものを作るコラボレーションだ。

野党の連中とだけじゃない。
この後に右翼と言われている人たちとも会う事になっている。

 また、全く違う分野にイメージを広げている。
人間も動物のように冬眠出来たら荒れ果てた自然の回復が可能になる。
世界の人間が半分づつ順番に冬眠して交代しながら順繰りに生活を行えば自然
を戻すのも夢ではない。
既に或るところで密かに研究チームを作って福賀のイメージが膨らんでいる。
いずれ良い報告が来るだろう。

 つづく

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小説「イメージ2」No:45

小説 イメージ No:45

 福賀は気配を消しながら街に出て歩いていると男が一人気配をけして後を
付けて来ていた。
その後を付けて来る男も気配を消して少し間隔を開けながら付いて来る。
福賀は後の男の正体を透視して人気のない場所へ誘うように入って行った。
そして福賀の後ろを付けて来る男の後ろに二つの影が追っている。

 全身黒づくめの福賀を付けて来た男は自分党幹部から刺殺を以来された
スナイパーか殺人請負人に違いない。
恐らく他にも隠れて福賀の様子を伺っている気配を福賀は感知している。
程よい距離間隔をとって林の中に入って行った。
男がサイコダイビングを仕掛けてくる気配を福賀が感じた直後だった。
男は凍りついたように固まってしまった。
闇の中から現れた二つの影が固まった男を挟むようにして連れ去っていった。
恐らく闇の世界の人間か、ひょっとするとCIAだったりするかも知れない。
福賀は其の気配を背中に感じながら街の灯りの中に消えた。

 いよいよ福賀の周りで色々な力が働き始め、魑魅魍魎の世界と其処から抜け
出そうとする人達の熾烈な戦いになってきた。
自分党の旧体制下の連中は外から来た福賀に良いところを持って行かれほぞを
噛んでいながら自分たちの欲望を形にしようと躍起になっている。
「闇雲会長。何か仕掛けませんか。刺客も用をなしませんでした」
「そうか。彼を何処かに誘い出し不正な行動を掴めるような仕掛けを考えろ」
「解りました。やって見ます」
「みんなの党が福賀に接近している情報が入りました」
「自分党を解体する気かも知れない」
「自分党がなくなったら我々はどうなります?」

「無くなる事はないが今みたいな力は無くなる」
「それは我々の存在価値が無くなるって訳でですね」
「そうだな」
「それはいけません。次も無くなります」
「そうだな」
「何としても福賀を追い出して闇雲会長に返り咲いていただかねば」
「だから云ってるだろう。彼を失脚させるんだ」
「何がなんでも」
「そうだ」

 すでに現実ではあり得ない妄想になっている事とも知らず党内では魑魅魍魎
感覚が息づいているのだから国民と如何に離れているか。
だから永田町の常識は非常識と国民から思われている。
福賀をおとしいれる策略はすでに実行に移されていた。

「福賀副総理にお出でいただき恐縮です」
「いや、京都は古都と云われるだけに趣きの品格が高く感じられます」
「恐れ入ります。今夜はごゆっくり京都を楽しんでいただきたいと思います」
「有難う。あまり気を使わないでください。疲れますから。お互いに」
「おいでやす。おおきに福賀副総理さん」
「お世話になります」
「お世話になるのはこちらどすえ」
「あ~そうだったね。参ったな~」

 こんな事を福賀がしたり云ったりしませんね。
誰だって福賀を知る人なら直ぐ解ってしまうのだが闇雲派のやる事はこの程度。
これは或る商社の接待を装って賄賂を渡そうとする安っぽい企てなのだが。
これが福賀に裏を書かれて大失敗に終わる。

 その同じ頃に東京は赤坂の中華料理店では闇雲前総理がゼネコンの社長と蜜
談の最中でおまけに何やら沢山の札束が入った紙袋を渡されて店を出て来た。
秘書らしき共を連れているが紙袋は闇雲がしっかり持っている。
ど~んと誰かに突き当たった。
「無礼者!」

「何?無礼者だと。人に突き当たっておきやがって何だ!」
闇雲が思わず手が出て相手の胸ぐらを掴んで引き寄せた。
相手は踏ん張って堪えた時に相手のTシャツをはだけさせてしまった。
其の時だった相手の右肩に入っている刺青が現れて其れを見てしまった。
あ此れは不味いと思ったのだろう。
其の手を離して飛び散った札束をお供と一緒に拾い集めて駆け去って行った。

 衆議院分会の議場では自分党の代表質問が行われている。
質問者は自分党の最大派閥の会長前総理の闇雲だ。
「自分党の党員であり、議員であり、総理経験者がこうした質問をするのは
非常に心痛む事であります。他党から質問されては我が党の恥を晒す事になる
ので質問をさせていただきます」
自分が所属している党に関した質問をあえてしている正当性をアピールする。

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マティス展より

「福賀副総理に伺います。今年の4月15日の夜9時頃は何処にいらっしゃい
ましたか?」
「はい。今年の4月15日の夜ですか」
上着の内ポケットから手帳を取り出し確認。
「9時頃は東京の赤坂にいました」
闇雲はしたりと思いニンマリと口だけで頷いた。
「福賀副総理ウソをついてはいけません。これはテレビ中継されています。
今年の4月15日夜の9時頃京都で財界の或る人と会っていたのではありませ
んか?」

「闇雲議員、今年の4月15日私は東京の赤坂に居ました」
「ダメですよ、福賀副総理。貴方は京都におられた。これを見れば明らかです」
闇雲議員は証拠の映像をスクリーンで提示するように求めた。
「どうですか?ここに映っている人は福賀副総理でしょう。違いますか?」
福賀は全く動じる様子がない。
「私は赤坂に居ました。闇雲議員も4月15日その時間は赤坂におられました」
一瞬、闇雲の顔が固まった。

「闇雲議員が私が京都に居たと示された写真の男は私ではありません。私に似た
私のダミィーになってもらっている人です。私は闇雲議員が秘書を連れて或る人と
密かに会う情報を得て赤坂に行きました」
闇雲議員の顔が歪んだ。

「闇雲議員に伺います。赤坂の中華料理店の個室で或る人と会って重そうな紙袋
を受け取り店を出たところで事故に会いませんでしたか?」
質問者は私だと云わんばかりに答えなし。
「サングラスをかけたヤクザ風の男とぶつかりませんでしたか?」
闇雲は固まってしまったか言葉がない。
「其の時持って居た紙袋を狙われたと感じて反射的に男のシャツを掴んで引っ張
りませんでしたか?」
闇雲の固まった身体が震えだした。

 IMG_20230818_004539_419.jpg
マティス展より

「其の時、持って居た紙袋が地面に落ちて中から札束が転がり出て来たのを秘書
の方が急いで拾って紙袋に入れましたね」
闇雲は自分が投げた罠にはまっていた。
もう頭の中は真っ白になっているのだろう。
身体を丸くして質問者席にうずくまって動かない。

「闇雲議員いかがですか?間違っていたら云ってください」
闇雲が突然起き上がって反撃にでた。

「ねもはも無いでっち上げの嘘っぱちだ。どこにそんな証拠があるんだ」
呻くように吐き捨てて闇雲がわめいた。

「ぶつかったのは私ですが解らなかったようですね」
「そんなバカな。ぶつかったのが福賀副総理だって。そんな事ありえっこない。
あの男には刺青があったんだから」

「そうですか。事故にあったのは確かなんですね」
「ああ、事故はあった。だけど秘書と食事しただけだ」
「それだけですか?」
「ああ、それだけさ」
「紙袋はどうしましたか?」
「そんなもの持ってない」
「其の中に札束が入っていましたが」
「そんな事はない。人を落とし込むのもいい加減にしたまえ」
「でも、その刺青の男が見ています。そのほか通行人も見ています」
「だったら、その刺青の男を連れて来なさい。だいたいその刺青の男が副総理
だなんてあり得ないでしょう。証明して下さい。出来るんですか?」

「出来ます。其の前にその時の様子を撮ってありますから見ていただきましょう」
闇雲の必死の抵抗に福賀が答える。
「そうですね。京都のようにダミィーでないように闇雲議員と争ったヤクザ風の
男が私だった証拠も示さなければなりません」

 議長に訳を話し許可をとった。

「私は国立アート大学の一年生の時から3年余り五代目彫辰なる人に六代目彫辰
を継がせたくて付け狙われました。そして三年生の6月に命がけで六代目彫辰を
継いで欲しいと頼まれ此の人を死なしてはならないと仕方なく承知してしまった
のです。私とその関わるところに害が及ばないように守る刺青を五代目彫辰は私
の背中に入れました。テレビの放映もあるので其の点のみボカシを入れるように
してください」
と云いながら上着を脱いでネクタイをとりYシャツを脱いでTシャツになり右肩を
出して議員席に見えるようにした。

 其処には彫られた雲の部分が見て取れた。
闇雲議員はありえないモノを見せられて声もなくうなだれた。
議場は騒然として静まり返り異様な感じで溜め息につつまれた。

「本日はここまで。明日まで閉会します」
議長のやや興奮気味の声が議場にひびいた。

 つづく


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小説「イメージ2」No:44


小説 イメージ No:44
 
「何が人間として良い事なのか」
「また聞きたくなった」
「人間は自然の中から生まれた生き物です」
「そうだ。そいつを忘れて生きている人間が多い。その一番大事な事を
しっかり心に置くって話だ」
「それは自然をないがしろにしては人間は生きられないって事です」
「そうだ。それが大事なことだ」
「そこから人間として何が良い事なのかって考えるんです」
「なるほど」
「自然界には全く同じものがありません。花も木も鳥も魚も動物も昆虫も爬虫類
波も雲も人間も人間が作り出した物も全く同じものはありません。どこか違う」

「機械生産された同じ製品もですか?」
「そうです」
「例えば何処が違いますか?」
「並んだ場所が違ったり時間が違ったりします」
「なるほど」
「全く同じものはありません。それが自然界なのです」
「人の顔も違いますね。双子も何処か違いがあります」
「いっぺんに出た訳ではないですね。どっちらかが先ですね」
「そっくりさんでも全く同じではありませんね」
「芸能人に似てるからって売ってるのってやだな~」

「私も嫌ですね。要するに偽物ですから」
「それから人真似あれもやだな~」
「私も嫌です。真似に価値は無いです。本物であることに価値があります」
「オリジナルですね」
「そうです。其の点で日本は劣っています。偽物を認めていたり物真似を認め
ています」
「そっくりさんを使う方に問題アリでは?」

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「そうですね。そして其の使い方を認める方にも問題ありです」
「お笑いですが、偽物が出て来て笑っている。それって認めてるからでしょう」
「なんでそうなってしまうんでしょうね」
「拒否すれば偽物は出てこないのに」
「そうです。認めなければ良いのです。受けるって認めるって事ですよ」
「それが解らなくなっています」
「危険ですね」

「価値観の違いですが・・・物事の考え方が其処に在ると思います」
「物事を深く考えない傾向」
「そうですね」

「そんなに難しく考えない。軽くて良いって傾向でしょうか」
「それは云えていますね」
「考えたって変わらないんだから云ったって聞かないんだから云っても無駄」
「社会が悪いことにしちゃう」
「自分はどうなんだ?。どう考えているんだ?。思考す基準ってあるのか?」
「無い人多いでしょうね」
「自然から生まれた生物なんだから」
「先ず其処に帰りましょうよ」

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「外国が認めた後で日本が認める傾向は今だに続いていますね」
「よくそれで恥ずかしくないですね」
「全くです」
「そんな事を云われて腹を立てている人結構いるでしょう」
「いるでしょうね」
「自信がないんでしょう。自分で決められないって」
「最低ですがね」
「自信を持つ必要あり」

「残念だけど古い人に多いですね。戦争に負けて自信をなくしたのかも」
「長いあいだ戦争ばかりやって来ましたから其の後遺症でしょうか」
「自信をもって此れは良いんだって決められない」
「アメリカが良いって評価すると良いんだって可笑しいでしょう其れって」
「アメリカに限りませんね」
「要するに外国です」
「日本に素晴らしいものが一杯あるのに解らない。誇りに思わない」
「外国から云われて気が付いたりして」
「恥ずかしいです」

「価値観は色々あると思います。でも価値観の基準が問題ですね」
「そうですね。基準の違いでその人の価値観の姿が違うのですね」
「そうだと私は思っています」
「自然を大切に思う人思わない人」
「本物をよしとする人しない人」

「其の違いですが人間の違いで考えて見るか見ないかがあります」
「どう云うことですか?」
「人間の違いは顔だけではありません。人間には持てる感覚として5つの感覚
が用意されていますが必ずしも全部を持たせてもらっているとは限りません」
「なるほど。そうですね。見えるとか話せるとか聞こえるとか味がわかるとか」
「そうです。それを五感といいます。視覚=見る感覚・聴覚=聞く感覚・触覚=
触る感覚・味覚=味わう感覚・嗅覚=匂いを感じる感覚ですね」
「なるほど確かにうちら視覚と味覚で楽しんでいただいているんだ」
「そのうち一つの感覚でも授かってなかったらと考えるか考えないか。ですね」

「その違いを知り合うところから良いことってなんだろうと考えます」
「なるほど。其れ其れが違いを持ち合っている違いが物事を考える基準って事」
「そうです。私はですよ。そのお互いに持ち合っている違いが基準です」
「難しいけど解ったような気がします」
「人間でも世界の国々でも夫々違いがあります」
「なるほど世界になりましたね」
「違いのないものはありません。違いとどう関わるかです」

「大まかですが例えば20歳のひとは30歳の事が解りません。30歳の人は
40歳の事は解りません。飛んで60歳の人は80歳の事は解りません」
「言われてみれば確かにそうです」
「その年にならなければ解らないって在るんですよね。実際は解ったようでも
実際には其の年にならなければ其の年の事は解らないものなのです」
「それも違いの感覚ですね」
「そうです。同じと考えるか違うと考えるかです」

「堅い話になり過ぎましたか?」
「そうですね。でも、たまには良いんじゃないですか」
「簡単に言えば色々な違いを持ち合って人間同士って事なんです」
「人間同士だからどうなら良いんだろう?」
「そうですね。さすが大将は解りが良いですね」
「あっしも人間ですからね」
「私も人間です。周りの色々な人間に囲まれてる人間です」
「一人じゃないって事ですね」
「そして一人だけ良ければ良いって事ではないって事です」

「そうだな。周りも良くなくでは良いって訳にはいかないね」
「ですよね」
「それで?どうするって?」
「誰でも出来る事もあれば出来ない事もあるでしょう」
「在るもので無いものを補うってどうですか?」
「悪くないね」

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 マティス展より

「大将だってやってるでしょう。大将が握る寿司は大将じゃないと出来ない」
「みんな違うから。大将の寿司が旨いって皆んな来てる。そうですよね」
「そうですよ。大将が握る寿司が好きだからですよ」
「な、そうだろう」
「それは間違いない。他と違うから」
「そう云う違いって個性だから貴重です。尊重されるべきです」
「違いは個性」

「云えますね。自然の間違いなのか視覚を持たずに生まれて大人になった人が
これも個性って云うのを聞いたことあります。中々云えない事だと思いますが」
「福さんは色々広い範囲で色々な事を聞いて考えているんだな」
「色々知りたいですから。自分の中に出来るだけ沢山の引き出しを作っていて
其の中に色々なネタを入れて置きたいです」
「成る程ね。ネタか。ネタは新鮮で良いものが最高」
「それを大将のセンスで選んだり決めたりするんでしょう」
「そうだよ。それが一番大切な事だし、楽しみってものかな」
「私たちも人間として良い思考と行動と実現のために良いネタ探し心がけねば」

 皆が忘れているけれど福賀は3歳で両親を亡くし叔父に養育された孤児です。
それが人間はどう生きれば良いのかって真剣に考えている。
何不自由なく両親の愛に包まれて育った者が福賀のように考えもしない。
自然界に違いと云えば違いだが考えさせられないだろうか。

 自分党の中に不穏な動きが出始めている。
「会長。いつまで福賀にやりたい放題にしておくんですか?」
「早いうちに潰しとくかお灸を据えとかないと大変なことになりますよ」
「大変なことってなんだ?」
「闇雲派が潰されるって心配してるんです」

「阿保か?そんな事があってたまるか。今に躓いて転ぶあら安心しろ」
「本当ですか?なら良いんですがね」
「こないだ裏の方にどうにかしてくれないかと頼んだんですが断られました」
「なんでだ・」
「福賀には手出し無用って御触れが出てるそうです」
「本当か?」
「本当です。私がじかに頼みに行ったんですから」
「其れは不味い。旨い手を考えねばなるまい」

 時代遅れも甚だしい。
今時、如何にも怪しい黒ずくめの服装をした男二人が隠れている。
そんな事が福賀に通じないと思うところが既に勝ち目なし闇雲前総理。
しかし、自分党の中で福賀失脚の為の戦いは始まっている。

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 マティス展より

 つづく

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小説「イメージ2」No:43

小説「イメージ」 No:43

 バスの中は後半も総理所信表明代理演説の話で盛り上がっていた。
車部長の優しい運転であっと云う間に伊東温泉・山海ホテルに到着。

「いらっしゃいませ。福寿司ご一向さまお久し振りでございます」
「やっと来れました。よろしくお願いします。やんちゃが一人おりますが」
「やんちゃさんご苦労様でございます。観たましたよ。ワクワクしながら」

「ゆっくりしたくて来ちゃいました。私の部屋に直行します」
「後ほど伺わせていただきます」
「し~ですね。そっとね」

「よっぽどそ~として居たいらしい。店に来た時からそ~とそ~とって」
「そうですか?多分騒がれ通しだったのと違いますか?」
「そうですよね。あんな事やり遂げたばかりだからね」

「し~とかそ~とって解ります。此方にも色々問い合わせや取材やらで前とは
だいぶ違います」
「やっぱりね。良かったり悪かったりですね」
「ちょうど良いって具合には中々行かないものですね」
「そのうち前に戻って落ち着くと良いですね」
「そう願いたいです」

 福賀の部屋は女将が毎日きちっと整理をしているので以前と変わりない。
「女将さん有難う。お世話していただいて申し訳ないです」
「遅くなりましたがご結婚おめでとうございます。奥様をお連れになってとは
いかないんでしょうね」
「有難う。そうですね。何でも皆一緒にはしたくないので」
「そうですか。何となく解るような気がします」
「皆んなと一緒に下で入る前に此処で入りたい」
「私もご一緒したいのですが福賀専務お休み前にまた来ます。今は何か冷たい
お飲物をお持ちしましょう。何がお望みですか?」
「日本酒の冷をお願いします」

 大広間はバスでの続きで熱い議論で盛りが続いている。
「あまり早い時間ではありませんので先ずは恒例の貸切大浴場30分づづです
がご希望の方は貸切券をお渡しします。お上がりになりましてら今日は最上
階の宴会場にいらっしゃってください。そちらに簡単な料理とお酒を用意して
お持ちして居ます」

 何だ?何だ?いつもと違う感じだけど何を企んで居るか女将さん。
もう福寿司の大将は何が起きようと全然大丈夫って感じで楽しんでいる。

 女将に言われた通り貸切大浴場で福賀と一緒したあと、其の興奮を其の儘に
ご一行は最上階の宴会場に集まった。

 此処には他の宴会場にはない檜造り高さ50センチの舞台があり後ろには
高砂の松が描かれた屏風が置かれている。

 舞台前の両側に一人御膳が左側と右側に人数分並べられている。
舞台の下右端に綺麗どころが5人三味線を持って控えている。
いつの間にできたのか福賀副総理の囃子方で言い換えれば福賀バンド。
福寿司の連中は突然出現した芸妓さんたちに見とれている。
「え~芸妓さんが・・・」
「私実際に見るの初めて」

 ここで、改めて山海ホテルの女将が挨拶をする。
「福寿司さんが連れて来て下さっていた福賀専務さんが副総理になられて久し
振りのお越しで、かっぽれと奴さんをおさらいなさいます。料理を召し上がり
ながら、お酒をお呑みになりながらで良いとの事ですので、お楽しみください」

 女将から地元の芸妓たちの紹介があって福寿司一泊温泉旅行の宴が始まった。
その芸者さんたちに気を取られているうちに舞台には浴衣の尻をはしょって頭に
豆絞りのねじり鉢巻をした福賀が上がっていた。

 何か変わった宴会でも始まったのか最上階の部屋(スイートルーム)に宿泊して
いる客が女将に聞いて来た。
「此方で宜しかったらどうぞ。お構いは出来ませんが」
「良いんですか?」
「踊っていらしゃるのは?」
「それは教えられません」
「そうですね。お聞きする方が野暮でした」
「ほ・ほ・ほ」
「いや~~~お見事です副総理」

「奴さんだよ」

奴さん どちら行く あーきたこりゃ
旦那 お迎えに さても 寒いのに 供揃い
雪の 降る 夜も 風の 夜も
さて お供は 辛いね
いつも 奴さんは 高ばしょい
ありゃさー え こりゃさー
それも そうかいな~
まだまだ
「姐さん どちら 行く あ~ きたこりゃ

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沖の 暗いのに 白帆がさ~ 見ゆる
あよいとこの あれは 紀ノ国 やれこの これわいの~ よいと さっさっさ
みかん船じゃえ さてみかん船 みかん船見ゆる こりゃよいと このほい
あれは 紀ノ国 やれこの これわいのー よいと さっさっさ
みかんじゃえ
さて みかん船 みかん船見ゆる こりゃよいと このほい あれは 紀ノ国 
やれこの これわのー さのさっさっさ みかん船じゃえ

 時間は夜の10時を回っているだろう。
時間的には宿泊客には未だ宵の口かも知れないが静かな癒しの時間だ。
それを充分わきまえた声質とお囃子で歌がながれ三味線が追う。
日本の芸として海外で挨拶代わりに披露できる様に福賀がその筋の家元から習っ
たものだ。

 合気道・少林拳・気功術で鍛えた身体は柔に剛にと変化して妙。
厚手の檜の板で造った舞台を踏む音は小鼓を打つようだ。
空転は前転も高く優雅で美しい。

 以前の事。
山海ホテルの女将に伊東の芸妓置屋の危機を相談された。
「福賀専務さん何とかなりませんか?」
昔から宴会の席を盛り立てる粋な役割をになってきた芸妓さんたちが居た。
昨今は洋風になってコンパニオンが其の役を担って盛んだ。
だがしかし、それで良いのかとホテル・旅館たちは疑問に思っている。

 大袈裟に云えば、全て洋風になればいいのか?日本は無くなって良いのか?
此れは戦後から今に掛けて常に問われなければならない大きな問題だと福賀は
受け止めていた。

 コンパニオンには何があるのか?芸妓には何があるのか?考えて見ると解る
事はかたやパーティでオモテナシかたや宴会で踊りとお囃子・お座敷遊びなど。
全てコンパニオン全て芸妓と云うものではないが、宴会と芸者が少なくなった。

 そこで、福賀は伊東の芸妓置屋の若女将を東京の地唄舞の宗家にお願いして
内弟子にしてもらって名取に育ててもらった。
伊東から伊豆に範囲を広げて舞の質を上げて行った。

 一踊りして芸妓を労い礼を云って舞台の下真ん中に陣取った。
「あ~ぁスッキリした」
待っていた様に両側からどっと拍手が沸いた。
「インドネシアのバリでは武器で戦わず舞踏で戦った歴史があると聞く」

今、福賀は心の中で何かと戦っていたのかも知れない。
「自然あっての我々だからね。それを忘れてはいけないと思うと云うか大事に
しなければ良い事はない。便利な事は良いけれど其れは不自由なところに必要で
あって、そんなに不自由でもないのに便利を求めるのはどうなんだろう?」
「自然あっての我々だから自然次第で我々も変わってくるって事だよね福さん」

「大将の云う通りです」
「いや、あっしは福さんから聞いた事をそのまま云ってるだけだけど」
「大将は謙遜してますよ。とっくの昔に理解してるんだから」
「それはどうかな。でもね、福さんに云われて思い当たるって事は結構ある」

「大将の良いところは気持ちが素直で純だってところだと思う」
「あっしはね、頑固だけど良いと感じたら素直に聞いちゃう」
「そうなんですね。大将は一本気で曲がった事が大嫌い」
「自然次第。全くその通り。自然が壊れたら我々も壊れてしまう。なぁ福さん」
「そうですね。生き物の人間は自然次第です」

「当たり前の事だから皆んな解っている事なんだけどな~」
「大将もそう思うでしょう」
「思うさ!」
「だけど、忘れてしまったり、忘れようとしていたり、考えない様にしていたり
変な努力をしている人が多いんですね」

「金や権力には都合よくないものだからだろう」
「我々は自然の中で生きているんですから、自然次第、それは誰も否定できない
事なんですがね~」
「そうなんだよね。否定出来ない真実を話しているんだかね。それでも実際は
其の事実と向き合わない心で受け止めない。そんな人が多い」

「それが大きな問題なんです」
「簡単な事なんだけど、この問題は難しい」
「福さんは何が人間にとって良い事なのか考えたんだよね」
「そうです。考えました。学生の時ですが」

 つづく

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小説「イメージ2」No:42

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No:42

そっと福寿司の暖簾をくぐって入って行く。

「あや?」
し~っと福賀が口に指を添えて合図をする。
解ったと女将が頷いてカウンターの中に向かって女将が口をパクパクさせる。
(フ・ク・ガ・フ・ク・ソ・ウ・リ)って送ってのれんを取り込みに行った。

「え~急ですが。今日は店の温泉一泊旅行になりました」
「何で?福賀福総理が来る訳がないし」
「え!来たの?」
「嘘でしょう」
「本当です」

「福賀副総理はあそこにいらっしゃる」
「あれは大将が撮っておいた代理演説のビデオでしょう」
「あ、そうか」
「で、こっちに居る人は?」

「凄い事やってくれましたね」
「こら!それは俺が最初に云うんだ。先に云っちゃた」
「大将ごめん。みんな云いたいよな」
「云わずにいられませんよ大将」
「あんな大変な事をやってくれちゃったんだから」
店中もう賛辞の嵐と拍手で大騒ぎになってしまった。
いくら福賀が気配を消しても消しきれない福賀の全体に蛍光塗料が塗られて
いるような状態になっている。

「バレたか。福寿司さんの寿司が食べたくてこっそり来たのに」

「解った。皆さんあの話は後でゆっくり夜通しで副総理に話を聞きましょう」
「いいんですか?朝まで付き合っていただけるんですか?」

「朝まで話し合いましょう。此処から始まった大事な話だから」

わ~っと歓声が上がった。
「いいか。今日は特別だからな。出来るだけ皆んなで行こう。どうだ?」
「いきますよ。行かないでか」
「今日行かないでいつ行くの?」
「お前さん。ちょうどいい人数よ」
「良かったね。みんなで行けて」

「あれ、海辺さん来てたの?知らなかった。福さんから連絡があったの?」
「いいえ。何となくいらっしゃる気がしたんです」
「そういうのエスパーって云うんでしょう」
「そうです。私は福賀専務のエスパーです」
海辺は女将と二人で笑いあった。
「女将。頼んだよ」
大将に云われて女将が2箇所に連絡を入れる。

 30分少しでバスが来た。
バスの中では国会中継のビデオの話で大盛り上がりだ。
中でもやっぱり大将が他を寄せ付けない勢いでまくし立てる。
「総論・各論・具体論だよ。国民の立場で議員の後ろに居る我々に向かって
話してくれてるって、こんなに嬉しい事はないって初めて思ったね。それも、
官僚の作った原稿じゃなくて、自分の言葉で語った。それも突然の代理の
所信表明演説だよ。前半1時間休憩20分だった。その後また1時間。議員の
方は休んだけど福さんはその間ず~っと壇上に立ったままだった」

「あの代理演説が議会史上初めての出来事だって解っていました?」
「そんな事考えたりしますか?任された事を果たすだけでしょう」
福賀副総理に自分がなっちゃってる人がいる。

「そうですね。任されて責任を果たす事だけに気持ちを集中しました」

「初めての事で、今までに全く無かった事に出会って感動しました」
「確かに始めたの事は素晴らしい事だけど。責任の方が重かったのでは」
「日本だけじゃなく、世界でも無かった。あれは世界的な事件ですよ」
「よく出来ましたね。あれは考えていたパフォーマンスだったのですか?」

「いや~ぁあれは岩上総理には申し訳ないが私が手伝いをさせていただくには
幸いな機会でした」

「え~~~?」

「あれは本当に一か八かの勝負でした。まさか総理が入院で代理を任される
なんてね。降って湧いた災難だけど。なるようになれって腹を括りました」

「その日の朝頼まれて、用意する時間無いですよね。原稿なし手ぶらで壇上に」
「今までの人は事務方が作った原稿を読むだけだったじゃないですか」
「そうでないと出来ないからだよ。自分のしっかりした考えがないから、
事務方に頼って作ってもらう。それを読むだけ。それが副総理は総理の代役で
何故原稿無しで出来たんですか?」

「それは、総理と私の理念が同じだったからです。私に手伝いを頼んだのも
私が引き受けたのもそこなんです。その点はかなり面倒な部分なので後で
ゆっくり説明します」

「もう皆んなテレビに釘付けで動けませんでした」
「あの時に動いていた人間は福賀副総理だけでしょう」
「それが終わったらうちに来ちゃったんだから、どうもこうも何んて云ったら
良いか。だってよ、テレビじゃまだニュースで福賀副総理の演説を報道してる
のに本人が来ちゃって此処に居るって可笑しくない?」

「大将が初めて福賀専務と会って息が合ったのは何か在ったんですか?」
「あったね。初めて店に来て温泉に行きませんかって云われた」
「それがどうだったんですか?」
「こっちの気持ちとぴったり合っちゃった」
「温泉に行きたかった?」
「そうなんだよ」

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「そんな訳でこうなったんだよ」
「なるほど良く解りました。それで私らもこうしてご一緒出来てるんですね」
「そう云う事だな」

「記者会見に戻りますが総理とどんな話があったのか聞いて良いですか?」
「そうそうそれが聞きたいです」
「記者会見の時に聞かれて、それは岩上さんに聞いてくださいと云ったあれ?」

「あれは突然パリに電話があって、どうしても手伝ってもらわなければなら
ない自体に来て居るって云われたんです。一方的にね。住む世界が違い過ぎる
からね。無理だって初めは断った。それでも、自分党を変えるのは今で、改革の
チャンスだって口説かれた。貴方のイメージがデザイン出来るチャンスだってね」

「で承知されたのですか?」
「何か条件をつけたのですか?」
「ただでは承知しなかったでしょう」

「そうですね。手伝いをどんな形でお考えですかって聞いたら総理になったら
閣僚としてと仰ったから其れでは副総理でなら手伝えると思うと云いました。
直ぐ返事が来て副総理で手伝ってくれって。それで私は我儘だから自由に
泳がせてくださいってお願いしたら解りました。其れは肝に命じて守るって」

「云ったんですね。凄いな~。記者は此処を聞けば良かったんですよね」
「ちげえねえ。岩上総理は良く福さんの事を知っていましたね」
「調べていたんじゃないですか」
「情報収拾は仕事のうちですからね政治家は」
「それに福賀専務は業界でもマスコミでも可なりの地名度高いですよ大将」

「あの時の総理の話では此れからは女性に頑張ってもらわなければいけない
って云っていました。その点も私と同じ考えです」

「それにしても一人か二人が良いところでしょう」
「申し訳みたいにね。そんなものでしょう。今までの感覚では」
「それが一気に半々ですからね。もう誰もが唖然とするほかないでしょう」

「それも政策のうちです。男女機会均等は今までは絵に描いた餅でした」

「云っては悪いけどお飾り程度で入れてますよって感じでね」
「法的には掲げてるけど実体が無かったモノを実際に形にしちゃった」
「それが凄いよね」
「男女半々の組閣なんて何処の国でも出来ていませんよね」

「何処でもやってる事をやっても何も変わりません。絵でもそうですが、全て
オリジナルでなければ価値がありません。やらないだけです。やれば出来ます」

「そうか。それがイメージ戦略ってやつですね」
「話はあの原稿なし代理演説に戻るけど、あの演説をフランス航空の社長が観
ていたそうですよ」
「フランスでも?他の国でも観てたでしょう」

「そうですか。何処で誰が見ていてくれるか解らないものですね」

「テレビ局は外の様子も中継してました」
「街角だけじゃない。テレビのあるところ全部で観てました」
「何しろ事が事だし、今まで皆んな持っていた原稿持ってないしね」
「こんなスリリングな風景は観た事がないもんな」
「あれを観ないで何を観るかって事だよな」

「もう何も言えない。無事に済んでほしい。それだけの気持ちで泣いてたよ」
「そうでしょう。大将だからきっとそうしてるだろうって思っていました」
「私もあの時は未だ会社でしたが、仕事どころじゃなくて皆んなTVを観てた」
「私も会社から真っ直ぐ福寿司さんに来ちゃった。来てよかった」

「何たって凄い。え~とやあの~なんて全然無くて最後までやり切ったんだ。
自分に確かな考えが無かったら出来ない事だっもんな」
「そうです。大将の云う通りです」
「それは確かです。でも考えはあっても中々出来ないことだと思いますよ」
「そうだな。福さんと温泉に行ける仲で良かった」
「大将はそこに来ちゃうんですね」
オチがついて大笑い。

 つづく

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