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小説「イメージ2」No:50


小説 イメージ No:50

 岩上総理を最上階の自分の部屋に案内をした。
「此処が私の秘密基地です。此処には温泉露天風呂も付いて居ます」
「ほ~これは驚いた。いつから此処に?」
「雪月花の専務になって間もないころでした。ふと海が見渡せる場所に行きた
くなって伊東に来ました。ちょっと山を登ったところに此のホテルが目に付い
たので来て見たら女将と気が合って色々アドバイスを求められて関わったので
其の代償と云ったら何ですがこの部屋を貰いました」

「なるほど。それでよく解りました。良い出会いだったのですね」
「そうなんです。此処でフランスの美術家たちと知り合い世界に広がって行き
ました」
「大体が大学時代から始まっている様ですね」
「私は3歳で両親を失って叔父に育てられましたが孤児です。財産は両親から
受け継いだ資質と可能性です。無形の財産の発掘に一生懸命に没頭して出来る
限り力を付けました.。色々ありましたが、化粧品の仕事を望んでいて雪月花
にスカウトされました。」

「貴方に興味を持つ様になったのは元旦に出た雪月花の新聞広告が其の始めだ
ったと思います。今までに誰からも受けたことのない衝撃でしたから。あれが
福賀貴義に関心を持たせてくれました。そして貴方のよりよい環境づくりです。
あらゆる事につながる広い意味をもった理念が私自身の考えとつながりました」

「このホテルに関わってフランスの美術家と知り合って行動範囲が欧州を始め
アラブ園にもつながり、それから中国の中枢につながりました」

「福賀さんにはタラレバが無いんですね」
「はい。それはしない事にしています」
「誰でも私でも、あれをしておいたら、あれをやっていればと後悔があります」
「そうですね。一介の孤児として其れはしないで生きようと決めました」
「だから精神的にも肉体的にも強い福賀貴義が存在している」
「まだまだですが後悔をしたくないです」
「年齢は関係なく福賀君ではなく福賀さんって呼ばせてもらいます」
「総理もかなり面白い人ですね」

「特別って良いとは思っていないのですが福賀さんの温泉露天風呂は特別です」
「入りましょう。岩上さんと裸の付き合いになります」
「そうですね。これからもよろしく」
「私の方もよろしくです」

「あの時は肩の部分だけでしたが全身を拝見して初めて刺青に神々しさを感じま
した。彫った五代目彫辰さんの魂が彫り込まれて。福賀さんに無理に頼んだ償い
に彫った気持ちが伝わって来ました」

「こんなの親が産んでくれた身体に彫りやがってって思いましたよ。でも、彼の
気持ちも解るんです。この世界は陰の世界で保存されています。戦後入って来た
タトゥーとは違う日本独特のモノで精神的な意味合いが強いです」

「日本の政治家でも彫り物を背負っていた人が居たと聞きます」
「そうですか。昔は表だったものが今は裏ってありますね」
「そうです。難しいところです」

「ある以上。ある事を不思議な世界として密かに楽しんでもらおうかと思って
福寿司の温泉一泊旅行で一緒した人たちと此処の女将さんに頼んで貸切にして
もらって入っています」
「そうでしたか」

「失礼します」
「貴方は?」
「はい、バスの添乗員山谷です。福賀副総理にお願いして参りました」
「福賀副総理と入ったことあるの?」
「はい。福賀専務さんの時になんどもご一緒させていただきました。それ以外
では岩上総理が初めてです」

「え~そうだったの?」
「はい」
「他にもいるのかな?」
「福賀専務さんとこうした裸の付き合いをされた方ですか?」
「そう」
「いらっしゃると思います。限られた信頼出来る人たちが・・・」
「福賀さんどうなの?」
「山谷の云う通りですよ。此処には少ない限られた人。貸切にして大浴場では
可なり多くの人たち」

「今日は福賀さんのお誕生日でしたがお祝いもしてなくて申し訳ありますん」
「そうだった。いつも頼みごとばかりで慌ただしくて申し訳ない。改めてお誕
生日おめでとう」
「私もあわただしくて・・・お誕生日おめでとうございます」
「君もか?」
「はい」

「あの~総理。龍が温泉を泳ぐの見たことあります?」
「ない」
「見たいですか?」
「見たいね」
「総理が見たいそうです」
「山谷。君は気が利きすぎですよ。ではお祝いに龍を泳がせて見ましょうか」
自分でお祝いにっておかしいでしょう。
空の月もリクエストをするように輝きを増したようだ。
程よく温まった福賀の背中は桜の花びらがほんのり薄桃色に染まっている。

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 パリのポンピドー美術館で「自然らしい自然」をテーマにした福賀の世界展
が開かれた。
美術館の壁面には「自然らしい自然」を描いた福賀の作品が飾られている。
部屋の空間には巨大な毒キノコをイメージする物体が置かれている。
これも福賀の作品。

 その又別の空間をねって阿波おどり連が部屋から部屋を渡りながら踊っている
強烈な太鼓の音が消えると越中八尾のおわら風の盆を踊る会が現れて胡弓の音色
が後を追う。
夜になるとバリ島のバリ舞踊のサダ・ブダラ・ラティ・ヤマサリなどの舞踏団が
ケチャの中央で踊る。
美術館のいくつもの部屋を使って福賀の作品と音楽と踊りのコラボレーションが
1ヶ月続いた。

 その間の夜には福賀のアトリエでパーティが行われている。
そこには様々な個性が集まってくる。
此処の建物のオーナーでアラブ圏の王子もその姉妹三人も参加して福賀に怪しい
視線を送っているし、国連事務総長のカタル女史も福賀にサインを送っている。

 パリで日本料理店を開いている福寿司の次男坊がやって来た。
「福賀前副総理お久し振りです。今日は目一杯楽しんでいただこうと店を閉めて
やって来ました。後ほど料理を並べたいと思います」
「よろしく。厨房は解っていますね」

 次々と色々な人たちが集まって来た。
パリ航空の社長もやって来た。
「よろしく」
フランス美術連盟の会長が、フランス政府高官が、アラブ圏の大使が、中国の
高官が、イギリスの大使がなどなど。
そして
「福賀さん。お久し振り・・・」
パリ画廊のオーナーが・・・。
「お待ちしていました」

「おお!キキいつも有難う」
キキはパリ航空の社員で美術連盟の人たちを日本美術ツアーのコンダクター
として伊東温泉・山海ホテルに来た時に偶然居合わせた福賀と会ってお互いに
協力いあっているエスパーの一人だ。
このパーティも福賀のために仕組んでいた。

 そして福賀が待っていたグループがやってきた。
今日来ている各国高官の国から選ばれた極めて優秀な科学者たちだ。
「福賀さん。良い知らせがあります」
「そう。それは嬉しい」
「後で話します。楽しみにしてください」

 つづく

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