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小説「イメージ2」No:38

小説「イメージ」 No;38

 今までのあらすじとつづき。

まず福賀貴義(ふくがきよし)の生い立ち。
3歳の時に両親は交通事故にあってなくなり、父方の叔父に引き取られて育つ。

 3歳より叔父の指導で合気道を習得する。中学の時に美術教師に水彩画を習う。
絵を描く事で自然と親しくなり自然と会話するようになる。自然とのつながりが
直感力を高めて行き少林拳と気功の習得になって行く。

 国立アート大学を一浪で合格して自分に親から受け継いでいるだろう資質など
無形の財産の発掘に全てを賭けて行く。其の過程でデザインの公募展に入賞して
学生では初めての日本広告美術協会の会員になる。
殆ど同じ時期に国際アート・フェスティバルでグランプリを獲得する。

 それが大きく新聞で報道され株式会社雪月花からスカウトされる。
様々な条件を全て受け入れられ新設の化粧品部門のトータルマネージャーになる。
優れた直観力と感覚を屈指して企業利益を想像以上に増していき株主から高評価
を受けて入社4年で専務取締役になる。

 海と温泉をこよなく愛し伊東のホテルに自分の部屋を持ち、アラブ圏の王国で
国王の命を助けたお礼に石油基地2箇所を提供されパリにある王子が持つお城の
中に自由に使えるアトリエを提供されている。
また、中国には学生時代に少林寺に入門して少林拳を学んだ関係で中国の中枢に
コネをもっている。

 フランスには美術家連盟と伊東温泉・山海ホテルで知り合い交流をもっていて、
フランスの化粧品会社と合同の会社を立ち上げている。
最近ではTVのアルミの窓に出演依頼があり、月刊誌からも取材の申し込みをうけ
ていたり、ホテル・旅館連盟と漁業組合の顧問になっていたり、経営者会議の会
長から青年部・部長を任されたりしている。

 経営者会議の女性部会で戦略講師も務めている。点字を学び点字で文章を打つ
事も出来るし手話で話す事も出来るがまだ勉強中。

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 そして今一週間の休暇をとってパリにいる福賀から各方面に月下ナミカと結婚し
た挨拶状が各方面に届けられた。
余りにも突然の結婚挨拶状に誰もが唖然としている。
株式会社雪月花の役員会議室でも思いもしていなかった知らせに役員達は呆然と
して皆んなどう対応したものか思案中。

「社長。おめでとうございます」
やっとの事で誰とはなしに声が出ておめでとうの合唱になった。
「ありがとう皆さん。真に申し訳ありません。実は、福賀専務と娘は学生時代に
知り合いだったのです」
「え~~~本当に?」
「本当です」
「それでは、福賀専務の線は?」
「そうです。娘でした。私があの新聞記事を見て彼とコンタクトを取らねばと直感
した時に家内から娘の知り合いだと聞かされナミカに彼と会えるように頼む事が
出来ました」
「そうでしたか。運が付いていたんですね」

 まだパリに着いて二日目だっただろうか、夜おそくホテル内のレストランで
食事をして部屋に帰って来た時だった。
「もしもし。月下です。如何ですか久しぶりのパリは?」
「まだナミカさんと少し見て歩いているところです。ナミカさんと変わります」
「ナミカか?元気ですか?そう、そうですか。声を聞いて安心したよ。福賀さん
と変わってくれる?あ、もしもし自分党の岩上さんから電話が掛かって来て君に
急いで連絡を取りたいと。そう、内容は言わなかったが緊迫した感じだったから
携帯の電話番号を教えました。ごめん。多分すぐ掛かってくると思うからよろしく」

「え~自分党の岩上さん。何だろう?」
「政治家でしょう。其の関係かしら?」
「そうかもしれないね」
着信音が鳴る。
「もしもし福賀です。義父から電話ありました」
「ご結婚おめでとうございます。ご旅行中に申し訳ありません」
「有難うございます。私に何か?」

「申し訳ありません。本当に申し訳ありません。事が緊急を要するものでして
実は私は自分党の総裁候補にされそうな状況で、どうしても私が引き受けねば
ならない状況でして、より良い環境作りをお考えの福賀さんに手伝っていただく
他なくなりまして大事なご旅行中に本当に申し訳ないのですが助けてほしいです」

「確かに趣旨は岩上さんと同じですが、私はデザイナーでして政治は世界が違い
過ぎてお手伝いしようがないと思いますが」
「それでお願いしてます。今がチャンスです。変革が出来るチャンスなんです」
「でも、世界が違い過ぎます」
「今なら党の存続は自分の存続と党員たちは思っています。どんな事でも聞く状況
が今あります。福賀さんに手伝ってもらえばイメージがデザイン出来ます」

「そうですか。それで岩上さんは私にどんな形で手伝いをお考えでしょうか?」
「私が総理になった場合に入閣と云う形で考えています」
「そうですか。では、副総理ではどうでしょう。それが出来れば手伝いをさせて
いただきます」
「副総理?」
「はい。岩上さんの代わりになって働ける立場の副総理です」
「なるほど。解りました。党にはかって見ます」
つうと云えばかあ、話は直ぐに通じる感じが気持ちいい。
電話が切れて又掛かって来た。
「党の承認を得ました。副総理としてよろしくお願いします」
「解りました。それでは明日の便で日本に帰ります」
「申し訳ない。これも日本のため助かります」
「着いたら電話します」
「有難う」
「我儘を云ったりしたりしますが全て手伝いのためと思って自由に泳がせてください」
「承知しました。肝に命じて守ります」
あまり物事に動じない福賀だが思いも寄らない急展開に呆れていた。
まだまだ此れから行う予定が沢山あるのに一時政治に行って戻ってこよう。
「ふ~ぅ」

「副総理?ふふふ」
雪月花の時は部長でと云って、役員の時は専務でって閣僚で云われて副総理でだって。
本当に面白い人ね。
ナミカは可笑しさがこみ上げて来て止まらない。
大変な事になってしまった。
ナミカは笑っていた口を開けたままで泣いている。

「お父様。ナミカです。福賀が大変です」
「え!大変って?福賀さんに変わって」
「義父さん。大変なことになりました。でも、まだ内緒の段階ですが岩上さんが
総理になったら副総理で手伝う事になりました」
「冗談でしょう。そんな可笑しな話は聞いた事がありませんよ。民間から副総理。
気は確かですか。そんなのありっこ無いです。聞き違いでしょう」

「でも、部長から専務って話はありました」

「そうでしたね。君は東西観光で平の新人さんを部長にしましたね」
「はい」

「専務から副総理ってありなのか」
「岩上さんの電話は手伝ってほしいって話でした。で副総理んら出来ると云いました」

「お父様。この人思っていたより変な人でした」
「どうします?」
「仕方ないでしょう」

「仕方ないですね」
「お母様によろしく云ってください」
「解りました」

「それにしても、よく党が受け入れたね」
「自分党は、今そうした状況なんでしょう」
「そうか、党としては大きいけれど内容的には只の大きな傘なんだね」
「党が無くなれば自分たちも無くなるって感じ」

「そうか。今が改革のチャンスか」
「そうだと思います」
「では、この事は私だけが聞いておきましょう」

「そうしてください。明日の便で私は帰ります」
「解った。気をつけて」
「ナミカさんは知り合いにお願いしてゆっくりパリを楽しんでもらいます」
「有難う」

「副総理ですか?」
「そうですよ。副総理として自分党の岩上さんの手伝いをします」
「そう。いい感じ。やっぱり思った通り楽しみが大きくなったわ」
「折角のパリ旅行が残念だけどナミカがいい感じって思ってくれたから又の楽しみになった」

「私には貴方の生き方が最大の関心事で、それを見守れる楽しみが最高なんだから」
「愛してるよナミカ」
「私も愛しています。だから誰よりも大きく広く思いっきり羽ばたいてね」

 自分党の首班内閣は国民の信頼を無くし、支持率が10%に落ちて闇雲総理に不信任案が
提出され可決された。
その後、岩上が最後の砦として総裁に押されて総理大臣に任命されたら国民本位の体制に
戻さなければならない。其の時を岩上は待っていたのだ。

 岩上総裁で首班指名投票が行われた。
自分党が議席多数を持っていたので岩上総裁が内閣総理大臣に指名された。

 さ~あ直ぐに組閣に入らなければならない。
福賀は自分が副総理として手伝う条件として検察と警察に力のある十和田を副総理として
加えてほしいと望んでいた。

 組閣本部が設けられたが其の中は外部から知る事は出来ないがどうやら法務省のTOPと
岩上総理だけのようだ。
報道関係のテントが立ち並ぶ中を呼び込みが始まった。

 つづく

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