SSブログ

小説「イメージ2」No:47


No:47

 選挙運動の期間は秋口でちょうど祭りが行われている最中だった。
北海道から青森そして岩手と宮城へ新潟に飛んで富山はおわら風の盆おどり
に参加する事で夫々の土地の人たちに溶け込んで行った福賀だった。
一度も宣伝カーには乗っていない。

 選挙運動は岩上総裁と当の幹部が真摯に国民の安全と国の平和を訴えてる
誠実さが国民に認められて自分党の単独過半数獲得に繋がって岩上総理大臣
が新しく誕生した。

 自分党の大勝利は福賀の力によるところ大である事は周知の事実。しかし
福賀は何処でも誰にも岩上総理の理念と働きと人徳と云っている。
「これで岩上総理への手伝いも出来た。でも、自分党で出来る事もそろそろ
限界かも知れないな」
選挙が終わり「嫌われない日本」と「よりよい環境づくり」として基地なし
「日本完全独立」を進めている福賀だった。
「そろそろ1年になりますか」

 外では花火大会の大輪の花火が打ち上げられていた。
近年、浴衣が好かれて男性も着るようになったりして女性にならって良い。
祭りも自分の街だけではなく全国の県は世界の国々との連帯が盛んになった。
福賀は副総理室の窓からイメージして其れ等の情景を楽しんでいた。
岩上総理の部屋から緊急のベルが鳴ったのは其の時だった。

 総理室への連絡ドアを開けると総理が胸に手を置いて床に倒れていた。
秘書官が総理は執務をしていて急に倒れたと福賀に告げた。
「十和田副総理に連絡は?」
「しました」
隣の部屋から十和田が入って来た。

「十和田さん、総理は心筋梗塞です。救急車を内密で呼ばなければ」
「そうだな。知られてはまずい」
救急車が呼ばれた。
既に其の間に福賀は総理の身体にまたがって気を送り続けていた。
5分ほど送り続けると総理が’ふぁ~と息をはいた。
「総理。解りますか?福賀です」
「あ~福賀君か」

 岩上の意識が戻ったようだ。
それでも福賀は岩上の胸のあたりから頭部に掛けて気を送っている。
「私を引っ張ったのは君だったか」
「そうですよ。よく帰っていらっしゃいました」
「極彩色の光が私を呼んでいた。もう少しで吸い込まれるところだった」
「大変ですがこっちに帰っていただかないと困ります」
「ハハハそうか。そうだったね」

 総理が倒れたとなっては具合が悪い。
「総理は少し休まれたら大丈夫でしょう。私が過労で倒れた事にしましょう」
総理と十和田副総理が顔を見合って頷きあった。
「そうしてくれるか」
この件は極秘にされて福賀は部屋から救急隊員に運ばれて病院に搬送されて
行った。

 空には秋を知らせる雲がいっぱいに散らばっていた。
岩上総理は総理官邸に帰り、医師と看護師に診察を受け披露回復の点滴を受け
る事になった。
福賀は検査を受けて少し風邪気味のようだと診断されて薬を出してもらい帰る。

 福賀副総理が救急車で運ばれ入院と外部にもれ(意図的に漏らす)記者たちが
押し寄せて来た。
「先ほど帰えられました」
と病院側のコメントで記者たちは・・・。
「どちらに?」
と聞くが其れはまた愚問だった。
「解りません。福賀副総理にお聞きください」

 IMG_20230508_161845.jpg

 其の頃すでに愛車が眠っている駐車場から福賀を乗せた黒のポルシェが静かに
滑り出していた。
家には帰らず今日は自分の秘密基地に向かっている。
途中のSAで必要な連絡をとり、後でメールしてほしいと頼み、車は伊東温泉・
山海ホテルに向かって走って行く。

 山海ホテルに着き地下の駐車場から直接最上階の自分の部屋の入った福賀は
女将に直通の電話を入れた。
「はい。直ぐ伺います」
福賀は取り敢えず部屋付きの露天風呂の入る。
暗い海に向かって大きく手を広げ空を仰いだ。

「失礼します」
女将がワゴンに冷やされたワインと洒落た肴を乗せて入って来た。
「有難う」
福賀は湯船から上がり其のまま3台のPCに向かって行き夫々のPCを開く。
メールボックスに入っている何通ものメールを確認する。
女将がシルバーグレーのバスロープを福賀に。
「有難う」
「お疲れ様です。私もお湯に浸かりたくなりました」
女将の身体が福賀の背に触れて来る。
「どうぞ。女将もお疲れ様」

 向き直った福賀は其の時初めて女将と目を合わせた。
福賀の目が女将を吸い込み始め、サイコダイビングに入った。
「私の方の事は思ってくれていれば感じられるから思ってください」
「解りました」
「パリ航空のキキも同じだから思うだけで大丈夫。通じます」
「はい」
「気持ちで連絡を取り合いましょう」
「了解です」
何の事か解らない会話だけれどお互いエスパー同士なんだね。

「してみますか?」
「はい」
女将は福賀がメールの返事を書いて送っている間に湯に入る支度をしていた。
福賀が仕事の用事が済むのを待って湯に浸かりに行く。
「そう。こう云うこと」
二人は背中を流し合って肴つまみワインを楽しんだ。
「今度いつ此処へ?」
「う~んです」
「そうですか」
「元に戻るか、先に進むか」

「其れはそうと、女将大分気を使っているようだね」
「以前のように専務さんって呼ばせてください。私は何も隠せませんね」
「少しい良いですか。横になって」
「はい。こうですか?」
「そう。其れで良いです。気を送ります」
福賀の例の気の注入が始まる。
おいおい岩上総理にして来たばかりじゃないか。
まず頭の両端から、そして胸は離れた上から次は腰これは骨盤辺りを斜め上
から手を離し気味に気を注いでいった。

 アラブ圏の国王がそして岩上総理が心筋梗塞で倒れた時に三途の川の手前
から福賀が強い超人的な力で連れ戻したあの気を初めて女将に注いだ。
湯上りの身体に生気が蘇ったように薄い桜色が浮き上がって来た。
「有難うございます専務さん。長年の気疲れが取り去られた感じです」
「良かった。女将には色々お世話になりっぱなしだから」
「そんな事云わないでください。専務さんのお陰の方が遥かに大きいです」

 そう云えばこの山海ホテルは福賀が関わって今の姿になった訳だからね。
女将の気持ちは勿論それだけではなさそうだけど。

 としても人間も動物も植物も全て生あるものは持ちつ持たれつですね。
岩上に頼まれた手伝いは十分に果たして自分党の改革出来て総理大臣に出来た。
もう少し頼むと云われ手伝う事にした。
今までの政府のあり方と官僚のあり方検証して改め始めた。
官界の方は民間人で構成した監査機関を設けて不正があったら洗い出して
告発すろ。

 政府を構成する与党の派閥にもメスをいれ、政治を私物化している権力者を
告発して潰していって国民と懸け離れた状況を直している。
其の一つが自分党の最大派閥闇雲派の会長の告発だった。
その後、自分党の中も利権目当て議員とそうでない議員に色分けされていった。
岩上総理の健康状態も気になる。
早々に引退を考えてもらった方が良いのではないかと福賀は思い始めた。

 定例の記者会見に福賀が出ている。
「常に良い環境を求めています」
「悪い環境を是正いてからですね」
「そうです。私は絵そ描くので、キャンバスに向かってイメージを形にして行き
ます。画面の中でイメージの環境を出来るだけ良い感じにしていかないと気持ち
良く進められません」
「良くない感じになったら?」

「思い切って描き直します」
「経営にしても云えますね」
「政治の世界でも同じですね」
「そう。描いたものが必ずしも良いとは限りません」
「折角描いたのに?」
「そう。折角って無いのです。求めるものと違えば其れを大事にして何とかしよ
うとしても良くなりません。描き直す思い切りが大事です」

「勿体ないとは?」
「そんな事は思いません。折角だから何とかしようとしても、方向が違えば悪い
方向にどんどん行ってしまうでしょう。描き直す、何度でも描き直す。その積み
重ねが大事だと思います」
「官僚の環境も描き変えを?」
「そうですね。意識改革を始めています」

「福賀副総理の分子が可なり居たりして?」
「戦略は言葉ではなく事実を作りながら進めて行くと良いですね」
「特権意識は?」
「そうです。特別な権力を持っているって意識を直さなければいけないでしょう。
人間形成の敵である優越感は良くないですね。同じ人間同士で人を見下げる意識の
働きですから良くないです」
「それが福賀さんの意識改革ですね」
「そうです」
「それは?」
「今まで院外で話し合って来ました」
「何人の官僚と?」
「何人もの官僚とです」
「今の官界は壊れますか?」
「壊れるでしょう」
「いつ頃?」
「近いうちに」
「戦略は?」

 つづく


nice!(68) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。