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小説「イメージ2」No:31

イメージ No:31

 福賀は東西観光の社長を引き受けて初めての仕事がバス運転部のレベルアップ
だった。これは基本的なポリシーの注入をして車部長でスタートさせた。
次は山谷が山海ホテルのロビーで福賀に聞かせた世界グルメツアーの立ち上げだ。
続々と立ち上げて来るだろうから早い方がいい。

「山谷さん、社長の福賀です」
 外から電話が掛かって来た。
「早速だけど世界グルメツアー部を作る事に先程の役員会で決まりました。この
企画は山谷さんの案ですから、貴女にやってもらいます。一週間の間に企画書と
部の構成スタッフを考えて出してください。明日から山谷さんは世界グルメツアー
部の部長ですからよろしく」
「私が部長ですか?」
「そうですよ。当然でしょう。貴女が考えた世界グルメツアーですから他の人には
出来ません。君に責任をもってやってもらいます。長として思い切って楽しい部を
作ってださい。どんな事でも必要なモノがあったら遠慮しないで直接私に云ってく
ださい。応援しますよ。楽しみにしています」
「有難うございます。あの時に思い切ってお願いして良かったです。頑張ります」
って云ってから何かお礼に云い足したいのか。

「あの~」
「何か?」
「先日、福寿司さんの伊東温泉一泊旅行に行った時ですが、あの時は仕事でして
皆さんとご一緒に貸し切り大浴場の参加をしたいのを控えていました」

「そうでしたか」
「今度また福寿司さんの旅行があった時には貸し切り大浴場に皆さんとご一緒で
お願い出来たらと思うのですがいけませんか?」
「いけない事はないです。平等ですから遠慮はいりません。参加したいですか?」

「はい。私も皆さんと一緒に参加したいです」
「そうですか。では行きましょう。そうですね。8時頃が良いですね。福寿司に
バスを出してください。運転は車部長にお願いしましょう」

「いつの8時頃でしょうか?」
「今日です」
「え!今日?解りました。車部長には?」
「私が電話します」
「有難うございます。宜しくお願いします」
「お二人新部長でしたね。進級祝いになりますか?」

「我儘を云って申し訳ありません。充分過ぎるくらい充分です」
「我儘良いですよ。何でも云ってください。それを望んでいますから」
「解りました。まだ色々解らないので勉強させていただきます」
「そうですね。それが仕事を楽しくします」

「車部長居ますか?居たら電話に出てください。社長の福賀です」
「はい。車です」
「急で悪いけど45人乗りのバス1台お願いします。福寿司に8時着ですが?
出来る。良かった車さん運転でお願いしますよ。添乗員は山谷部長でと本人に
云ってあります。行き先は伊東温泉山海ホテルです。では、今日の8時に福寿司
で会いましょう」

「もしもし、女将さん今日8時少し前に伺います。そう。大将によろしくです」
「あら専務さんお久しぶり。解りました。お待ちしてます」
「もしもし、女将さん。福賀です。今日45人位で伺います。大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよって。専務さん。お久し振りですね。お待ちしていましたよ」
「よろしく」

 そろそろホテル・旅館組合の組織作りと漁業組合の組織作りを考える時が来た
と久しく行っていなかった伊東に思いをはせて福賀はいた。
それぞれがそれぞれを生かし足りないのだ。
そして資源の有効活用にもつなげて行かなければいけない。
自然を敬って大事にする福賀の気持ち嬉しいじゃありませんか(雲)

 東西観光で初めての労使交渉が行われた。
会社内の各部所につながるオンラインを使って公開で始まった。
「私は社長を委ねられた福賀です。何でも聞きたい事を聞いてください」
「有難うございます。それでは社長が会社と我々に対してどんな考えを持っている
か聞かせてください」
「解りました。私の考えを聞いていただきましょう。会社も社員も明るくて元気で
いられる環境が大事だと考えています。そのために全力を尽くします」
「リストラはあるのでしょうか?私たちは常に安定した環境で安心した気持ちで働
きたいと思っています。しかし、今まで何時かリストラが行われるのではないかと
思う不安がありました。リストラはあるのでしょうか?」

「リストラ?何故?経験のある貴重な戦力を削らなければならないのですか?生か
す事が良い事だと私は思います。リストラはありません」
うお~っとため息が吹き出したような声があがった。
「リストラが無い事が確認出来て安心しました」
「安心第一です」
今度は社員から嬉しさの笑い声が上がった。
「今まで以上に労使の風通しを良くして欲しいのですが如何でしょうか」
「労使間で解らないところが無いように、それと建設的な意見がどんどん湧いてく
るような雰囲気にしたいですね」
「年齢に対してのお考えは?」
「年は余り考えません。年を気にして聞くのは日本人位でしょう。年を重ねただけ
のモノがあれば尊敬します。若くても想像力を発揮出来ればそれも尊重します」
「解りました。有難うございました」
「此方こそ有難うございます。よろしくお願いいたします」

 8時に福寿司に東西観光の山谷が入って来た。
「お待たせしました。東西観光です。いつもご利用いただきまして有難うござい
ます。バスが着きましたのでお店のお客様から順番にお乗りください」
「いつも突然で申し訳ないね。福賀専務の電話はいっつも突然だから」
「いえ、今日は私がお願いしました」
「そうだったの?珍しいね。何かあったの?」
「はい。良いことがありました」
「それは良かった。後で聞かせてもらうわよ」
「はい。よろしくお願いします」
福寿司の女将に挨拶をして山谷はバスに乗り込んだ。

 このバスにはもう一組を福賀が仕組んでいる。
東西観光の方は車と山谷の部長昇進祝いで、雪月花の方は次期取締役候補と一緒
いつもの様に大将の今日これから店の伊東温泉一泊旅行の宣言があり、それぞれ
心配されない様に電話で連絡してスタンバイしていた。
その中の次期取締役候補の5人何も解らず流れに混ざっているのだからどうなり
ますか。

「こんばんは此れから今日と明日皆さんとご一緒させていただきます。運転手は
昨日の午後に車両部の部長になった車です。よろしくお願いいたします」
ここで皆んなが拍手をする。
「有難うございます。そして添乗する私ですが、今日の午後に世界グルメツアー
部の部長にさせられました。山谷です。よろしくお願いいたします」
車内に大きな拍手が鳴りひびいた。

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「おめでとうございます。ちょっと聞きたいんだけど、良いですか?」
「どうぞ。聞いて下さい」
「前も添乗員さんで一緒だったと思うんですが、あの時は入社2年目とか云って
たと記憶してますが、あの時はまさか係長とか課長とかではなかったでうよね」
「はい、仰る通りです」
「って?それ飛び越して部長に?」
「はい。そうです。世界グルメツアーは私が社長に提案しました。今日役員会議に
社長が掛けて承認され部が出来て君の案だから君が責任持ってやるんだと部長に」
「すみません。おじさん日本人で直ぐ年聞きたくなるんだけど。今、おいくつ?」
「20歳です」
ぎゃ~って声が上がったぜ。
「20歳に部長なんて誰が決めたんですか?」
「雪月花さんの専務さんで東西観光の福賀社長です」
「さすが福賀専務やることが飛んでる。良かったね。福賀専務が社長になって」
「はい、車さんも係長から部長です」
うわ~って驚きの声。
「入社序列・年齢関係なしだね。誰にでもチャンスありだ」
「いや~良い話を聞かせてもらいました。今日は一段と楽しい旅になりそうだ」
「何故か解らないけど何時もより気持ちがいい乗り心地してない?」
「そうですね。これが部長運転って訳ですね。変わりましたね東西観光さん」
「有難うございます」
新参加の5人に段々と福賀の尋常でないあり方が感じられて来たようだ。
でも、未だ未だ此れからですからね。

 つづく

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