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小説「イメージ2」No:14 

イメージ No:14

「僕は此処に居る時は自然のままでいます」
はっとしてナミカは福賀を見詰めた。
研ぎ澄まされた身体はあのギリシャ彫刻の・・・
あれは・・・と思い出そうとしたが出てこないう~ん
そうだダビデだった。
え~~~でも背中に何かある。
ナミカが生まれて初めて見る本物の入れ墨が・・・
なんで何でどうして?。
そうだ福賀さんと同じ姿になろう。
ナミカはそう決めて立ち上がった。
其の時だ、どこからかジャスミンの香りが漂って来たのは。
 
 いつの間にかソファーにはブルーのバスタオルが敷かれていた。
前に置かれた低めのテーブルに形の違う茶飲み茶わんが二つと
常滑の急須が・・・そしてポットが置かれていた。
ナミカは自然のままの姿になって福賀の脇に座った。
「壁に飾ってある絵は全部僕の作品だから気に入ったのを選んで
くれませんか?」
と聞かれてナミカは・・・
「全部です」
「全部は困るな~」
「何故ですか?」
「「ナミカさんに・・・」
「ナミカと呼んでください」
福賀は少し黙っていた。
「それじゃ・・・ナミカへのお誕生日プレゼントにしたいから」
そうだったんだ。
「本当に?福賀さんの作品をいただけるのですか?」
「そんなことしか出来ないので」
照れてるぞ福賀(雲)
こうして居るだけで私には最高のプレゼントなのにとナミカは感動していた。

 管理人の居るマンションはオートロックになっている。
入り口のプレートにキィを触れるとドアが開くようになっていた。
8階建ての5階にナミカの部屋はあった。
玄関を入ると右にトイレ、其の隣がバスルーム。
左側に長めのシンクと食器棚・冷蔵庫が置かれている。
ウオーター・サーバーがあってエスプレッソ用の機器がある。
其の奥にフローリングのリビングが白と黒を基調としたインテリアがメーキング
されている。
グレーのカーペットが中央に敷かれた上に円形の大きなテーブルが置かれて居る。
右の壁には腰くらいの高さに揃えられた木製の家具が並べられて居る。
其の中のやはり木製の机の上にノートパソコンが置かれている。
右側の奥に寝室のドアーがあった。
「私はこんな部屋は贅沢過ぎるからいらないって云ったのです。でも、父が
お友達が集まれた方が良いし安全でないと心配だからと」
ナミカは恥ずかしそうに云い訳をした。

「高3の時に?」
「高校は横浜だったから・・・同じホームで」
「同じホーム?え~見られてた?」
「ホームには男子の大学生が沢山いましたが福賀さんだけ気になっていました」
「変だったから?」
「変じゃなくて、福賀さんだけが自由な感じだったからです」

 予感はしていたが部屋の感じでセンスの良さも解るし、直感力も十分ある。
福賀はナミカの事を何も聞かないし、ナミカも福賀の事を何も聞かない。
外の風景を眺めながら静かな風が二人に流れていた。

 ナミカは母と一緒に自分の誕生日パーティの準備をしていた。
壁には前日までに届けられた福賀の作品が飾られていた。
「この絵素晴らしいわね」
「でしょう」
「どうしたの?」
「あっ誰か来たみたい」
ナミカの大学の友達が連れ立ってやって来たようだ。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
「ようこそナミカのお誕生日に来てくださいました」
「ナミカお誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「ナミカあの絵どうしたの?」
「いただいたの」
「誰に?」
それぞれから用意して来たプレゼントが渡される。
「まあまあナミカの母です。よろしくお願いいたします」
「こちらこそナミカさんにはお世話になっています」
「手伝いに行こうかって話あったのですが其れも可笑しいかなって」
「大変でしたがなんとか出来ました」
「あ、いらっしゃったみたい」
「誰が?」
「あの絵素敵ですね」
「でしょう。私もびっくりしてましたの」
「どなたの絵ですか・」
「私も聞いたのですが、まだ教えてもらえないんです」
ナミカに迎えられて福賀が入って来た。
「お招きをいただき有難うございます」
「此方こそ忙しいのに来ていただいて有難うございます」
「あの絵をプレゼントしてくださった方です」
「福賀です。ナミカさんとお付き合いをさせていただいています」
「あ、海の家であった人だ」
ナミカの大学の友達は知らされていなかったのでびっくりした。
「ナミカの母です。あの素敵な絵をプレゼントしていただいて有難うございます」
これで全員そろった訳だ。
「みんな来てくれて有難う」
「ナミカ?知らなかったわよ」
「云わなかったもん」
「ナミカとお付き合いいただいて有難うございます」
母も福賀を気にいったらしい。
「いいえ、私たちの方が付き合っていただきお礼を云いたいです」
大学の友達は自分たちに云われたと思って居るらしい。
ま良いかとナミカは可笑しくて嬉しかった。
ナミカが気になる位に母は福賀にべったりだ。
これもまあ良いかとナミカは思った。

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つづく

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