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小説「イメージ2」No:21

イメージ No:21

「こんな遊び会長はされないでしょう」
「されませんね」
「遊びも色々で色々楽しまれては」
「そうだな。そうしてみたいね」

  会長が雪月花の月下社長に電話して来た。
「今何処に居ると思う?」
「何処にいらっしゃるのですか?」
「伊東の温泉ホテル」
「え~何でそんなとこに?」
「福賀くんに連れてこられた」
「え~冗談でしょう」
「月下さんあいつフニャフニャの蒟蒻だったぜ」
「そんな筈は・・・」
「私の思惑を完全にぶち壊してくれた」
「それは大変申し訳ありません」
「いや文句を云ってるんじゃない。どっちかって云うと喜んでる」
「そうですか。よく解りませんが」
「私が感じた堅物ではなかった」
「はぁ?私には非常に堅い感じがしますが」
「どこが?何で?」
「彼は合気道と少林拳と気功で鍛えている武道家ですから」
「何?彼が武道家だって。でも其れは堅さ違いですよ」
「そうでしたか。違う意味の堅さでしたか。失礼しました」
「人間が堅い柔らかいって云ったら其方の方でしょう」
「其方の方でしたら充分柔らかいです。出が出ですから」
「出が出って彼は何処から出て来たのかね」
「ほら文化の日に芸術祭だと近くの公園で裸踊りをする国立アート大学出」
「え~あそこ出だったか。其れは迂闊だった。何で云ってくれなかった」
「申し訳ありません。ご存知かと思っていまして」
「知っておくべきだったな~ぁ私の勉強不足だった」
「いえ、そんな~。とんでもないです」
「まだ何かありそうだね」
「在ると思います」

 想像力はその機能を持ち合わせていれば働かせることが出来る。
福賀の場合はデザインと絵画の領域で使いながら養われて来た。
想像力はデザインや絵画の世界だけのものではない。
どの分野にいても想像力は意識をもって使おうと心掛ければ働くのだ。
何か目的をもって何かを形にしようとイメージする。
そのためにはどうしたら良いのか。
そこに想像という働きが作動する。
貴重な想像力は使い養い豊かにしていかなければならない。
事を考えて進めるに当たっては此れをしたらどうなるか?
その後の進め方で結果はどうなるか?
想像力は先・先と展開いて行く。
其処には良い結果を求めるイメージがなくてはならない。

「ははは、彼はデジタルで私はアナログだって認識を忘れて自分の
思い込みで何時もの調子でやってしまった」
「いや、此方こそ紹介の仕方がいけませでした」
「結果的には彼と付き合えて目からウロコで良かった」
「有難うがざいます。未だ未だ色々在ると思いますがご指導してください」
「解った。驚かせて悪かった。此方こそよろしく」
「では失礼います。お休みなさい」
 会長は未だ未だと云われた雪月花の社長の言葉が気になっていた。
 そう言えば彼は温泉露天風呂に入りましょうって云わなかった。
 先輩の背中を流すくらいの気持ちがあって良いと思っている。
「あの~経営者会議の会長さまでしょうか?」
ホテルの女将から会長の部屋に電話が掛かって来た。
「そうだが?」
「私はここの女将です。これから30分男の大浴場は貸し切りです。
どうぞお越しくださいませ。福賀専務さんがお待ちしてるそうです」
「そうか。それは有難い。5分ほどしたら2階へ降りて行きます」
そうか。そうでなければ福賀は只の変わり者で終わるところだ。
やっと思惑通りになって会長は喜んでいる。
2階の大浴場に降りて行くと女将が待っていた。
「どうぞお入りください。福賀専務さんも入っておられます」
入って行くと中は静かで話し声も聞こえて来ない。
「入りますよ」
一応断って会長は中に入る。
「どうぞ」
確かに福賀の声だ。
ガラス戸を開けて中に入ると福賀が湯船に浸かっていた。
どうも福賀だけらしい。

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 つづく

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