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小説「イメージ2」No:28

イメージ No:28

 しばらくして国王が静かに話しはじめた。
「紅色をした大きな渦巻きに吸い込まれそうになっている私の腕を強い力で
捕まえて引き戻してくれた。それが貴方だったのですね」
「いえ医師の方たちと皆さんが国王の回復を心で願ったからです」
「ありがとう」
国王は王子から今までの様子を聞いて頷いている。
「中国の気功術ですか?聞いた事があるような気がしますが、私は貴方を通し
て中国に助けられた事になりますね」
「はい。そうなります」

「国王に飲んでいただきたいお茶がるので取って来ます」
お湯を用意してほしいと王子に頼んでその場を離れた。
「解りました。用意します」
福賀は隣の部屋に置いてあるバッグから中国のお茶を取り出して戻って来た。
「これは疲れを取り除くお茶としていただいたものです。私が先に飲みます」
と国王に告げて飲んで見せた。
何かアラブ系の国に来てもスムーズに話が伝わると思ったら翻訳機が有ったか。
外国の言葉が出来なくても会話が出来るなんて都合が良くなったね(雲)
でも、福賀の手話(ゼスチャー)もかなり有効のように見えたぞ(雲)

「おお!これは!」
身体の中で今までに無い何かが起きている感じに感動しているようだ。
「毎日はさけて、お疲れの時にとか、お疲れになりそうな時にお飲みください」
国王の感触をみて王子も興味をもったようだ。
「王子には必要ないと思いますが、どんな感じか試してみますか?」
福賀は少し薄めにして王子に渡した。
「おお!これはこれは」
若い人には直ぐ反応が出てしまう。

「国王はもう元に戻られたから心配ないようですね。でも、しばらくは安静に
していた方がいいと思います」
王子が国王に呼ばれて何か話をいている。
「父が福賀さんに大変興味をもって、もっと色々知りたいと云っています」
別に悪い事ではないし、隠す積りもないので構いませんと答えた。
「他には日本の武道で合気道と中国の嵩山(すうざん)にある少林寺の少林拳が
ありますが、ご覧になりますか?」
呼ばれて来て気功を使った以上流れとして仕方がないと福賀は覚悟した。
「何れにしても相手をしていただく強そうな人を用意してもらわないと・・・」
「解りました。父に話します」

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 王子は直ぐ戻って来た。
「大変喜んでいました。護衛官で如何でしょうか>」
「結構です」
王子の指図で王宮の護衛官が数人選ばれて連れて来られた。
武道の試合と云われたのだろう、屈強な大男が現れた。
皆んなまるでアラジンのランプを擦られて出て来た怪物のようだ。
身長2mを超えているのは間違いない。
白いふわっとふくらんだ提灯のようなパンツを履き、上半身は裸のまま。
それを見た福賀は自分も同じ支度でなければと思った。
「私も支度をして来ます」
隣の部屋のバッグから白のジャージを取り出して支度する。
「お互いが向き合った時に始めの合図をしてください」
と王子に告げる。
「解りました」
福賀は相手と合わせようと上着を脱ぎ捨てた。
アラブの王宮に名人五代目彫辰の登り龍が晒される。
それも覚悟の上だ。
国王はじめ周りの人たちは初めて見る東洋の刺青に感嘆の声が上がった。
福賀と護衛官が5mの間隔で向き合う。
「始め!」
王子の声が室内にひびく。
護衛官が突進してくる。それより早く福賀が右の手の平を突き出して気を放つ
護衛官の身体が弾かれたように後ろに飛んだ。
瞬きをする間もない瞬間の速さだった。
気を失っている護衛官に近づき福賀は活を入れた。
「気功を使いました。もう一人お願いします」

 福賀の呼吸に少しの乱れもなく静かに待っている。
前者と同じ位かそれ以上と思われる大男の護衛官がおどおどと進み出た。
両者が向き合う。
「始め!」
王子の声も気合が入る。
護衛官が福賀めがけて向かって来る。
福賀もその動きに合わせて向かって行く。
すれ違った。
そう見えた瞬間、護衛官の巨大な身体は大きな円を描いて背中から床に落ちた。
福賀は何事もなかったように其処に居た。
「日本武道の合気道です。もう一人お願いします」

 また前と同じくらいの巨人が恐々と前に出て来た。 
王子の始め!の声で福賀に向かって突進して来た護衛官に対して飛躍しながら
床に降りた。
護衛官は眉間を蹴られて仰向けに床に倒れ気絶した。
これは合気道ではなく少林拳の技だ。
相手をしてくれた護衛官に活を入れて回復させて静かに福賀は一礼して直る。
「これは少林拳でした」

 次は5人の護衛官が繰り出され福賀を囲んだ。
「始め!」
王子の声も鋭くなっている。
王子の始めの声で5人は福賀に襲い掛かるよりも早く夫々の動きを利用して
逆手に取り攻撃を防いで相手を倒した。
相手は自分の力で瞬時に倒れて動けなくなった。
5人はどうして自分がこうなったか解らず呆然としながら床に横たわっている。
夫々が足や腕などの関節を痛めている事に気付いていない。
福賀は護衛官たちの外れた関節をはめ直して5人を立たせて礼をした。
「これが日本の武道合気道です」
国王と王子に一礼をし、着替えをしてくると告げて隣の部屋へ行った。

 福賀は着替えをして戻って来る。
「有難うございます。芸術家と企業家でありながら武道家でもある福賀さん。
いや~あ、初めて福賀さんの武道を拝見して想像を超えた驚きを感じました。
是非うちの護衛官たちに学ばせたいです。お考えいただけないでしょうか?」
「そうですね。私に変わる人でよければ此方に呼ぶことは出来ます。勿論、任せた
ままでなく私も時々様子を伺う事で如何でしょうか?」
「勿論。そうしていただければ有難いです」
国王が嬉しそうに微笑んでいる。

「父が福賀さんの部屋をこの中に作りたいと云っています。それからお礼に
石油基地を2ヶ所プレゼントしたいそうです。私からもお願いします。私達の
気持ちを断らないで受け取ってください」

 つづく

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