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小説「イメージ2」No:18

小説「イメージ2」

No:18

 化粧品部門のスタッフは次の製品制作に没頭していた。
最初の製品が想像以上の高い評価をもらえた事が 自身につながっている。
他方、福賀は販売部のスタッフと全国の販売店を廻っている。

 福賀が入社して初めての株主総会が10月に行われた。
総務部長が開会の宣言をしたあと株主総代が発言を求めて立ち上がった。
「月下社長に前回の総会で福賀氏獲得について決まっていながら我々に
その経緯と彼の存在の大きさについて説明がなかった。我々は知りたくて
社長に迫り責めましたが我慢されました。本当に申訳ありませんでした。
そして今回の著しい業績に至った彼の存在感を知っていたら他に知られない
資料を得ての株式操作に繋がったやもしれません」
そうですよ。
「これまでの経緯はもう既に説明されています。我々を欺いての前期だった。
それはインサイダーに触れて罪人を生まないためだった。解っています」
みんな黙って頷いて居る。
「ところで凄い勢いですね。新製品が好印象で受け入れられて好成績でしょう」
「彼の入社は何処の企業からも羨ましく思われていると聞きましたよ」
「そんな彼がなぜ株式会社雪月花に来たのか?知りたいです」
聞かれて月下はうちには化粧品部門が無かった事と彼が化粧品のデザインを望んでた
事を上げて答えた。
「そうでしたか。それで解りました。ラッキーでしたね社長お手柄です」
会場から割れんばかりの拍手が沸き起こった。
「早くも事業実績が前期の2倍になってるじゃないですか」
「言う事無しですね」
「彼のイメージに掛けた経費は可なりのものがありますが、それを跳ね除けて売り
上げを伸ばしています。生産が間に合わないのは驚きです」
いつもは総会を掻き回す連中も今回は静かだ。
「閉会の動議を提出します」
「賛成」「賛成」「異議無し」の声が大勢を占めて気持ちよく後期総会は終わった。

 全体的なミーティング後、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などメディア対応が
進められ、広告予約と取材など、福賀は上から開発・制作・販売の全権を委任
され、よりよい環境づくりを進めている。
会社のバックアップは万全。
福賀のイメージは明確に描かれて居る。
そのイメージはストレートにスタッフに伝えられて行く。
後は福賀の考えとイメージを形にして行くだけ。
スタッフは夫々それなりに能力を持って入って来て居る。
その能力を良い感じで活かせばいい。
思い切って自由な気持ちでとスタッフに伝えている。
そして化粧品の中で福賀のイメージが株式会社雪月花のイメージとして作られて
行くのではないだろうか。

 容器・パッケージ・テレビCM・新聞広告・雑誌広告などをデザインした
ディレクターとデザイナーが年間の日本広告美術協会グランプリを獲得した。

 福賀が入って一年目の前期株主総会では膨大の経費が問題として問われた。
「しかし、大学卒直部長で入社って前例はありましたか?」
とんでもなく掛け離れた発言でかわす株主が居て又それに答える株主が居る。
「それは仰る通りです」
「思い切ったスカウトででしたな。彼には30社位のオファーがあったとか」
「確かに」
「でしょう。その彼のイメージにはそれ相応の費用が当初掛かるのは当然です」
此処に来て発言の辻褄が合って来た。
不満分子は静かで声も出ず静まり切っている。
「それにしても収益は昨年の後期を上回って伸びているのでしょう」
「次回に期待して今回は良しとしませんか?」
「はい。更に2倍の伸びが見込まれているようです」
「彼はしっかりと未来を見詰めて仕事をしていると思います」
会社側から月下社長が立ち上がって一礼をした。
「ご理解をいただき有難うございます。福賀も喜びます」
深々と頭を下げた。
「ところで如何なものでしょう。これは私個人の希望なのだが」
「何でしょう」
事務方は社長が頭を下げて締めに向かったと思ったのに未だ何かあるのか。
「そろそろ彼を向こうの席で見たい」
え~~~何を言い出すのかこの人は?
ところが会場の方から拍手が沸き起こったじゃないか。
「ほら、皆さんも福賀氏を役員席で見たい。そう思って居るじゃないですか」
また今度は「そうだ」「そうだ」の合唱になるし拍手になる。
「前例に縛られない社長如何ですか?次回お願いしますよ」
また立ち上がったぞ月下社長どう答えるんだろう。
「では、私共も考えていますし、次回、ご期待に添えるようにしたいと思います」
あ~ぁ云ってしまいましたよ。
「よし決まった。楽しみにしていますよ。では閉会の動議を提出します」
又また拍手で笑顔が会場に溢れた。
「閉会異議無し」「異議無し」席を立つ皆んなの勢いの良いこと。

さ~ぁいよいよ福賀氏が役員になる。

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つづく



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